年上の美しい人。
出逢った時には、すでに家庭があった。
お互い踏み込みたいのに、警戒するような微妙な関係。
走り出しそうになる気持ちを必死に抑えてきたのに、今日のあの人はいつもと違った。
いつもはしない香水の香りが俺の理性を吹き飛ばした。
こうなる事を望んだようにあの人が身を委ねる。
初めてあの人の肌に触れた。
熱を帯び汗ばむ身体から香水が香りたつ。
その香りに包まれ、頭の中心が痺れたような不思議な感覚。
そんな中で、あの人の声、表情、全てが鮮明に記憶される。
『ごめんなさい・・雄輔。・・愛してしまって・・・』
そう言いながら、いつしかあの人は泣いていた。
細い身体を抱きしめる。
忘れてしまえ!
全部、全部、忘れてしまえ!
俺の事以外は全て!
俺の名を呼び崩れ落ちたあの人を確かにこの腕で抱きとめた。
胸に抱きしめて眠ったはずのぬくもりが朝には消えていた。
あれは『さよなら』だったのだと、俺はその時はじめて気がついた。