部屋の前で待っていた直樹君に驚いて、すぐには返事ができなかった。
「もう入れてもらっても大丈夫だよね?」
直樹君に初めて泣きついたあの夜以外、直樹君が私の部屋に入った事はなかった。
送ってきてもらっても、いつもドアの前でサヨナラした。
今さらかもしれないけど、まだ雄輔とちゃんと別れてはいなかったから…。
そんな気持ちを分かってか直樹君も決して部屋には入ろうとしなかった。
たとえ、それが玄関であっても。
「彼と会ってきたんでしょ?」
『直樹君…』
何て答えていいか分からず言葉につまる。
「大好きだったんでしょ?お互い嫌いになった訳じゃないんでしょ?
だから、きちんとさよならをしたかったんでしょ?」
全部分かってくれてるんだ…そう思ったら直樹君の愛を感じて何ともいえない気持ちになっていた。
部屋にあがってもらってコーヒーを淹れる。
向かい合って座りながら、よく知ってるはずの直樹君が何だか違う人のように思えていた。
今までの優しさ以外に頼もしさも感じていた。
「これ…」 直樹君が小さな箱を差し出した。
「開けてみて」
そう言われてリボンをほどくと、箱の中には小さなケースがあった。
そのケースで中身が何かが分かる。
『これ…』
「高いものじゃないんだ」そう言って隣に来ると、ケースを開けて指輪を取り出した。
「僕、和美ちゃんみたいにしっかり貯金もしてなかったから…。それにこれからお金もかかるしね。
だけど、やっぱりこれだけはどうしてもプレゼントしたくてね」
そう言って私の薬指にはめてくれた。
どうしよう?
直樹君に抱きついていた。
『あのね…あのね…』
胸が熱くなって、気持ちが高ぶって、恥ずかしいけれど自分を抑えられない。
『抱いてほしいの…今すぐ。今、とっても直樹君に抱かれたい…』
自分から直樹君を求めた。
『…ダメ?』
「ダメなもんか!」
苦しいくらいに強い力で直樹君に抱きしめられていた。
つづく