・・・香夏子の事、頼んだからな・・。
そして、携帯を取り出すと、香夏子に連絡をとった。
静まりかえった部屋に携帯の音が響き、ドキッとする。
『・・・もしもし・・』 恐る恐る携帯に出た。
〈雄輔、今、そっちに向かったから〉 携帯の向こうから剛士の声。
〈・・・香夏子、雄輔は・・きっと、大丈夫だよ。・・・よく似てるから〉
『あの人に・・でしょ?ホントにそうかな?』
〈違うよ。香夏子、お前だよ〉
『・・・?私?』
〈ああ。確かに最初はアイツに似ていると思ったよ。でも、お前とも似てるんだよ。お前と雄輔、同じ目をしてる〉
『・・・』
〈香夏子?諦めるなんて、いつでもできるんだから・・・。6年前のアイツの時とは違うんだ。
自分から手放すような事だけはするなよ。・・・分ったな?〉 それだけ言うと、携帯は切れた。
しばらくして再び、携帯が鳴る。 今度は雄輔からだった。
「・・・香夏子?」
『・・・うん・・』
「今、部屋の下にいる。出てきて・・・」
携帯を切ると、雄輔のもとへ向かった。
雄輔がドアを開けてくれた助手席に黙ったまま乗り込むと、雄輔も無言で車をスタートさせた。
行き先も知らされないまま、夜の闇の中を車は進んでいく。
車は海岸沿いの道にある駐車場まで来ると停まった。
エンジンを切ると少し先の波の音が聴こえた。
香夏子は下を向いたまま1度も俺の方を見ようとしない。
思い詰めたように、膝の上で手をきつく組んでいる。
俺は手を延ばすと、その手を包むように手のひらを重ねた。
香夏子がハッとしたのがわかる。
「・・・大変だったな・・」 そう言った声が震えてて、自分でも驚く。
「もう・・1人でムリすんなよ。俺が・・いるだろ?」 そう言うのが、やっとだった。
きつく組んでいた香夏子の手から力が抜けるのが分った。
『・ゅう・・すけぇ・・』 香夏子がしゃくりあげる。
たまらなくなって抱きしめると、香夏子は小さな子供のように声をあげて泣いた。
どのくらいそうしていただろう? ようやく少し落ちついた香夏子が言った。
『これからも一緒にいてくれるの? 私、雄輔の傍にいてもいいの?』
少し笑って頷いてみせると、俺にしがみついてきた。
バカだなぁ・・・。傍にいて欲しいのは、俺のほうなのに・・・。
「香夏子。少し外、歩かねぇか?」 そう言うと俺は車から降りた。
つづく