藍…おかしな奴。
最初に見かけたのは、午後のラウンジだった。
『マルコポーロある?』 その声に目をやると女が1人でいた。
南の島のリゾートホテルに女が1人でいるのは珍しい。 そのショートカットの女に興味を持った。
帰る時、彼女の席の脇を通り抜けた。
テーブルの上には俺と1番違いのルームキー。
一緒に来た男と喧嘩でもしたか?…そんな風に思っていた。
でも、その後も見かける彼女はいつも1人だったし、隣の部屋からも彼女の気配以外は感じられなかった。
あの日、出かける為にフロントにキーを預けに行くと、車を借りようとしている彼女がいた。
「一緒に出かけようよ」 そう言った俺の誘いに彼女は乗った。
オレンジ色に染まる空気の中、彼女の手に俺の手を重ね、唇を重ねた。
そして夜には、一緒にシャンパンのグラスを傾け、同じソープの匂いの身体を抱いていた。
お互いの事を何も知らないまま…。
「知り合ったばかりの女と…俺のキャラじゃね~んだけどな…」 ベッドに寝転びながら、誰にともなく言ってみる。
ま、俺の勘は外れてなかったけどな…(笑)
確かに藍とは結構気が合った。
お互いに何も訊かないから、何も話さない。 だから、何も知らない。
だけど、たぶん同じ何か…。
よくは分からないが、そんな気がしていた。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。 窓からの夕暮れの風に目が覚めた。
すっかりと日が沈み、あたりが暗くなり始めている。
バルコニーにノースリーブのワンピース姿の藍がいた。
強くなり始めた風にショートカットのうなじが少し寒そうに見えた。
海と空の境がよく分らなくなった海を見ながら、昼間のドライブを思い出していた。
島を横切り、ココとは反対側の海岸線まで車を走らせた。
さらに島と島を繋ぐ道路を走り、小さな島にたどり着く。
観光客はめったに来ないそこは、以前に来た時とほとんど変わっていなかった。
『それに引きかえ、私は…』 誰もいない海岸で少しだけ泣いた。
何となく人恋しい気持ちになって、膝を抱えた私の目に映った紅い印。
腕の内側…今朝、雄輔が悪戯してつけたもの…。
帰ったら雄輔がいる。 …そう思ったら、少し気持ちが軽くなった気がした。
『雄…』
背中からパーカーを掛けてやると、藍が肩越しに顔だけをこちらに向けた。
そのままパーカーごとスレンダーな藍の身体を包み込む。
「おかえり」 首筋に軽くキスをした。
「何か…あったか?」 そのまま肩にあごを乗せて訊いた。
『な~んにも(笑)』 そう言って、少し身体をずらして俺に口づけると、
藍はいつものどこか冷めたような笑顔を見せた。
つづく
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お昼休みです。
腹が膨れたから眠いです(笑)