【恋夢】ダイヤモンドダスト…1 | カンタ印  元気印

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日々の出来事、思った事などをとりとめもなく...

降りしきる雪が暗がりを照らす中、

寒がりの彼女は巻いたマフラーに首をすぼめるようにして立っていた。

「ホントに来た(笑)」 からかうように言うと、

『来たわよ!いけなかった?』 少し怒ったような口調で照れくさそうに答えた。

初めて見せるその甘えたような仕草が年上だという事を忘れさせていた。



中途で採用され入った会社に彼女はいた。新入りの俺の教育係。

俺より年上だろうという事は何となく感じていたが、実際に歳を聞いたときにはかなり驚いた。

まさかそんなに年上だとは思っていなかったから。

そして…彼女には家庭があった。

当たり前だが、その事が俺に彼女との間に一線を引かせた。

それでも彼女と俺はとにかく気があった。

2人だけで出かけるような事はなかったけれど、飲み会の席などでは必ず隣に座った。

俺の気持ちを知ってか知らずか、みんなも俺達がとなり合うようにいつもしてくれた。

仲のよい姉と弟のように見られていたのかもしれない。



数年が経ち、俺の転勤が決まった。遠く離れた北の地への転勤。

もともと個人的に連絡を取り合った事はない。

これからは仕事でも関わる事もまずなくなるだろう。

転勤が決まってからというもの、彼女と俺の間にはどこか今までとは違った空気が流れるようになっていた。

そして、俺の最後の勤務の日、会社に彼女の姿はなかった。

『熱を出した』と休んだ彼女とは、前日の退社時に「『また明日♪』」と言葉を交わしたのが最後となった。



それから数ヶ月が過ぎて、俺の掛けた電話をたまたま取ったのが彼女だった。

用件を済ませた後も名残惜しさから俺はなかなか電話を切る事ができずにいた。

『…そっちは…そっちは寒いの?』

何も言わない俺に彼女の方から話しかけてくる。

「あ、ああ。寒いよ。雪…雪も凄くて、一面真っ白!」

『そうなの?ね?近くに有名な湖があるよね。行ってみた?…雪の湖…見てみたいなぁ…』

最後は独り言のように少し寂しそうな声で呟いた。

「…それじゃあ…見に…くる?」 

思わず声に出していた自分に驚いた。



「少しは温まった?」

暖炉の前で毛布に包まる彼女の腕や背中をさする。

「やっぱり車から降りるなんて無謀だったかな?」

『いいの。歩きたいと言ったのは私なんだから…』

歩きたいと言う彼女と湖畔を散歩した。

雪に足を取られる彼女の手を自然と握っていた。彼女も繋いだ俺の手を頼りにしてくれていた。

姉と弟の関係が崩れ始めていた。

いや、始めから姉と弟なんかじゃなかったのかもしれない。そうなろうとしていただけ…。

ふと合った目に視線を外せなくなった。

彼女の瞼がゆっくりと閉じていく。

その閉じていく瞼を見ながら彼女に近づくとそっと唇を重ねた。

                                                         つづく