『私、何やってるんだろ?』
つる兄にアパートまで送ってもらった後、私は雄輔の店の前まで来ていた。
店はとっくに閉店していたが、きっと雄輔が後片づけをしているのだろう?窓からは明りがもれていた。
『帰ろう』 そう思った時、店の入口が開いて、ゴミを持った雄輔が出てきた。
「咲希?どしたの?こんな時間に?」
私が返事に困っていると
「とにかく中、入れよ。風邪ひくぞ」と言ってくれた。
店に入ると、何となく私はカウンターではなく、海の見える窓側の席に座った。
「寒ぃ~なぁ。今、マルコポーロ淹れてやっからな」
しばらくすると店内の明りが消えた。
「電気ついてっと、外、見えね~だろ?」 雄輔がこちらに来ながら言う。
私の前にマルコポーロと灯りの点いたキャンドルを置くと、カフェオレのカップを手に隣の椅子に座る。
「この前は世話になったな」 ボソッと言う。
『私こそ、取り乱しちゃって・・・もう大丈夫なの?』
「あぁ、すっかりな(-^□^-)」
「・・・何かあったか?・・・話したくなければいいけどよ」
しばらく会話もなく、2人で窓の外を眺めていた。
「咲希?明日、仕事は?」
『お休み』 別れた彼と顔を合わせたくなくて、休みにしていた。
「・・・泊まってけよ」
雄輔は席を立つと缶ビールを2本持ってきた。
「オレも今日は飲みてぇ気分だし、朝まで一緒に飲まねぇか?」
後ろの大きなテーブルの壁ぎわの席に座ると私を呼んだ。
私は黙ったまま雄輔の隣に移った。
「乾杯♪」 雄輔が言う。
『何に?』 少し笑いながら聞く。
「じゃあ、咲希と一緒の時間に♪」
『何それ?』 笑いながらも乾杯した。
雄輔と2人。静かでゆっくりとした時間が流れる。私の大好きな時間。
『あ・・雪・・』 窓の外にはいつしか雪が降りだしていた。
「ホントだ。寒ぃわけだ」
雄輔は毛布を持ってくると私を包んでくれた。
1枚の毛布にくるまりながら左肩を抱き寄せられる。
ドキドキした。『雄輔、何か恥ずかしい・・・』
「他に誰もいねぇんだから、気にすんな」 何かいつもの雄輔と違う?
「咲希・・・すまねぇな。オレ、何にも返せなくて・・・」
『・・・・・』
「お前にはいっつも元気もらって、助けてもらって、なのにオレ、咲希に何もしてやれねぇ・・・」
『雄輔・・・。大丈夫・・だよ。いっぱい・・いっぱいもらったから。ここで雄輔と過ごした時間、宝物だから・・・』
「咲希・・・」 雄輔は肩にあった手を頭に持ってくると、自分の方に引き寄せて、髪に軽くキスをした。
「この香り、変わんねぇな~。オレが好きだった香りだ」 雄輔がつぶやくように言う。
「オレ達、何でこうなっちゃったんだろうなぁ・・・」
『そうだね・・・』
窓の外にはいつまでも雪が降り続いていた。
つづく