【恋夢】素直になれたら・・・6 | カンタ印  元気印

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日々の出来事、思った事などをとりとめもなく...

「咲希ちゃん、こっち~♪」 電車を降りると、つる兄が駅で待っててくれた。


雄輔が私の部屋に泊まった日から数日が過ぎていた。


『ごめんね、急に』 つる兄には電車に乗る前に電話をしていた。


近くに停めてあったつる兄の車に乗り込む。時間は夜の10時近かった。


『奥さんには?』


「ちゃんと話してきましたよ~♪ボキ奥さんの事、愛してますからね~♪」


こういう事をさらりと言えてしまうつる兄が羨ましい。


「行き先はお任せでいいね?」 そう言うと車を発進させた。




「何があった?何か聞いて欲しい事があるんだろ?」 海沿いの道を走りながら、つる兄が切り出した。


『うん・・・。さっき、彼と別れてきた』


「そっか・・・。同じホテルで働いてる人だったよな?」


『うん。優しい人だったのよ。私の事、すっごく大切にしてくれて。最初からね、結婚したいって言ってくれてた』


つる兄は黙って聞いている。


『私に忘れられない人がいるのも知ってて、それでもいいって。絶対に幸せにする自信あるからって。私もね、この人と一緒になったらきっと幸せになれるんだろうなって、真剣に結婚考えた。子供じゃないんだから、大人の付き合いもあったしね。この人と一緒にいたら、いつか雄輔の事も忘れられるんじゃないか?って思ってたの。でもね・・・』


私は雄輔が部屋に泊まった事を話した。


「咲希ちゃん?」 つる兄が驚いてこちらを見る。


『何もなかったよ。彼女いるのに、雄輔が何かする訳ないじゃない?』 私は少し笑うと続けた。


『ただね、改めて思っちゃった。私、やっぱり雄輔じゃなきゃダメみたい・・・』 少し涙声になる。


『別にね、ずっと雄輔だけって決めた訳じゃないのよ。なのに・・忘れられない。もう終ったのに・・・違うね、最初から何にも始まってないのに・・・』


車は海沿いの駐車場に停まっていた。つる兄が私の顔を心配そうに覗き込む。


「もう、雄輔と会わないほうがいいんじゃねぇの?」


私は首を横に振った。


『でもね、あの店で雄輔と過ごしてる時間が私の宝物なの。一緒にいる時だけは寂しくないの。幸せなの』


つる兄が何か言おうとしたのを遮って話し続ける。


『雄輔に彼女がいるのは知ってるよ。素直でかわいくて、とってもいい子。雄輔の事、大好きで・・・。そのうち結婚する時がくるだろうね・・・』


「咲希ちゃん・・・」 つる兄が困った顔をしている。


『でもね、雄輔が言ってくれたの。私がいたから頑張れたって。笑顔の私に助けられたって。だからね、それまでは雄輔の傍にいたいの。雄輔の力になりたいの』


思ってること全部話して、ちょっとだけ泣いた。


「もう何にも言わねぇよ!」 つる兄はふてくされたように言って、煙草をふかしていた。


ごめんね、つる兄。でもね、誰かに話しておかないと決心が鈍りそうだったんだ。ごめんね。


                                                           つづく