智くんを、そんな思春期と反抗期の僕が巻き込んでしまったんだ。
来ないで!と。
もう会わない!と。
離れたくなんかないのに。
会いたいのに。
智くん…助けて…胃が…痛いんだ…身体がが動かなくて…助けて…智…。
(テレパシーがあったらすぐに飛んで行ったのに!)
涙が出てきた。
逢いたい。
智くんに逢いたい。
遠ざけたのは僕だけど、智くんのお顔が見たい。
会って謝って許してもらえたら、小さい時のようにぎゅっと抱きしめて?
なんてダメだよね?
ダメかな?
智くん…僕…智くんのことが好き…大好きなの。
なのに…涙が止まらないまま…僕は意識が遠のいた。
(翔ちゃんの想いが痛いほど伝わってくる。告白してよかった。おれ割と愛されてる?)
「翔ちゃん!翔?起きられる?」
ママ?ママかな?ママの声がする。
帰ってきてくれたんだ。
全然気が付かなかったな。
ゆっくり目を覚ますとママが僕の顔を覗き込んでいた。
「翔ちゃん、起き上がれる?」
「ぅん…胃が…痛くて…」
背中を支えたもらって起き上がるのがやっと。
自力では起き上がれなかったことにショックもあった。
反面、智くんなら寝てる僕を起こすことなく抱き抱えて運んでくれただろうな。
とも、考えしまった。
逢いたい。
あッ、痛いッ…胃の中で誰かに先の尖った何かで突き刺されてるんじゃないか?なんて考える余裕はあった。
余裕っていうか…本当にそんな感じの痛さが間隔を開けて不定期に襲ってくる。
しかも一本とかじゃなくて…例えばフォークみたいなやつでツンツンじゃなくてドスッドスッって刺されてる感覚だ。
(そんなふうに痛かったらおれ我慢できねえよ?翔ちゃんよく耐えたな。)
なんとか起き上がってママが病院に行く準備をしてる間にパジャマから、とりあえずラフな部屋着に着替えた。
ママに支えてもらわないとダメなほど体力すら落ちてる。
これで、ママを呼ばずにぶっ倒れてたら、それこそママに心配掛けまくって叱られて、僕の要望も却下され結果ママが大変になってた。
なんなら命の危険さえあったんじゃないか?ってくらい胃が痛い。
いつもの病院、いつもの先生。
(だれ?)
(いつもの?)
(通ってる病院はお隣さん同士でありながら違う病院だから、この先生のこと…おそら…おれは知らない。)
「しょぉーちゃん!こんにちは!」
「・・・あの胃が・・・」
明るいだけが取り柄かよ!ってくらい明るい先生なんだけど…いまは、その明るささえどうでもよくて…ごめんね、先生。
わかるんだよ?患者さんを和ませようとしてるのわかるんだけどね…いまはムリ!
「くふっ・・・挨拶してる場合じゃないみたいだね? そこに寝そべって?」
「・・・はい。」
この病院は街のお医者さんって感じで、それほど大きくはないが、パパが幼い頃からお世話になっている病院で僕も物心がつくまえからお世話になっている。
この先生は何代目かは知らないけど、僕が幼い頃は先生のお祖父さまが先生だった。
今でもご健在だが、この病院は息子さんに譲って今では悠々自適に暮らしているとかで、たまにしか病院には顔を出さないらしい。
僕のことを「しょぉーちゃん」と呼ぶ先生は、「若先生」と呼ばれていて今では「おじぃちゃん先生!」と呼ばれている大先生のお孫さんだ。
智くんも「翔ちゃん」と呼ぶけど、それとは違う。
悪い気はしないけど、どこか子供扱いされてる気分にもなる呼び方だなって、たまにおもう。
ま、もう慣れてるからいいんだけど。
いまはそんな事どうでもよくて…とにかく早く診てほしいんだけど?