エゴイスト――「月」を癒す物語 | 姫嶋のトート・タロット日記

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占いを勉強中のオタク会社員によるブログ。
人生の転機をきっかけに、目標に向かって頑張る楽しさを知りました。

日記と言いつつ時々更新の予定です。
たまにタロットから離れた話題も書きます。

映画好きの間で今や話題作の「エゴイスト」。

編集者でありエッセイストの高山真氏の同名小説が映画化されたものですが、お恥ずかしながら彼の本を読んだこともなければ、お名前も存じ上げず……

昨年のうちに「2023年の話題作になるだろう」と紹介された映画の中で、風呂上がりの髪を乾かすキービジュアルを目にしてからずっと見たいと思っていました。

ミニシアター系の映画館でしか見られないものは、あっという間に配給が終わってしまうこともあるので、出社帰りに急いで見てきたのが今週の火曜のこと。

 




配信サービスのおかげで今は、話題作は少し時間を置けば家で見られるようになりました。映画館で見るのは、設備的に家よりも没入感を味わえそうなミュージカル映画やSF・アクション映画が多くなりがち。邦画はよほどの理由がなければ選ばないことの方が多いです。

 

でもこの作品は、映画館で見られてよかったと思います。

「スマホを見てしまう」等のノイズが入りにくい環境で、多くを語らない演技が中心の丁寧な演出に全神経を集中させられる。映画館がもたらす恩恵は設備だけではなかった……

 

本当にいいと思ったものについては、こうやって自分の感想をどこかに残すこともありますが、基本的には誰かの感想を読む方が好きです。

原作をご存じの方から、映画における原作のエッセンスを伝えきる尺の足りなさや、未読勢には不親切かもと思われる説明の少なさを危惧されている声も目にしました。

(たしかに、モノローグもなければ淡々と進む話に退屈さを感じるタイプの人はいる)

でも少しでも目の前の人間を理解しようと真剣になったことのある人なら、最高の役者さんたちが見せる名演技の端々から、嫌でも何かしら感じとってしまうんじゃなかろうか。

少なくとも、予備知識ゼロの姫嶋が見ても十分に狂えるくらいには良い映画でした。

 

オタクよろしく「どこに狂ったか」をツラツラ書きたいところですが、まだ公開されて日も浅いしネタバレはよくないのでやめておきたい。

でも少しだけ、このブログ記事を書く上で避けられないネタバレをします。ごめんなさい。

 

この作品のメインテーマは決して性的マイノリティなどではなく、たまたま愛し合ってた二人がそうだっただけ。

では何がメインテーマなのか。主人公の浩輔が逆立ちしたってどうにもできないと思っていた子供の頃の無念を供養する話、なのかもしれません。

 

愛する人へ限りなく向けられる奉仕や親切心はそこから派生したと思っている浩輔。

「自分のワガママでやってるだけだからどうか受け取って」と押し通したり、後になって自分の発した言葉や様々な思いに囚われたりします。見ているだけのこちらもまあまあツラい。

 

トートタロットでいう月のカードを一言であらわすと、「魂の暗い夜」だと先生は言いました。

本来は別の文脈で使われる言葉ですが、この映画の中盤はまさにこれではなかろうか。

冷静に今振り返ってみてもしっくり来るので、ついでにカードも置いておきます。


 

 

 

「あの時あんなことを言わなければ今頃…」

「自分の行いは愛ではないかもしれない…」

 

浩輔はまっ暗闇の中を一人で悔やみ、迷い、悩んでいるけれど、彼からの愛を受け取った人たちは確かにいて、ちゃんと幸せだったように第三者からは見えます。

当事者だからこそ、そこに納得がいくまでに時間がかかるものなのかもしれませんが、そこに至るまでは、浩輔は何も悪くないのにずっと自分を責めてしまう。

自分の中にある愛に気づいてないのは本人だけ。なんという「灯台下暗し」なんでしょうね。

第三者として見ているだけの立場なら冷静でいられますが、浩輔に扮する鈴木亮平さんの演技がそうはさせてくれないのがこの映画のすごいところ。ここまで狂わせてくれてありがとうと伝えたい。

(浩輔が本懐をとげたと思われるシーンに終盤で立ち会った時、なぜかこちらもカタルシスを感じて大変なことになりました……)

 

終演後、公式からの供給が欲しすぎて邦画で初めてパンフを衝動買い。原作本も翌日ポチりました。

あとになって高山氏がwebでこんな連載をされていたことを知りました。もっと早くに読んでおきたかった……!

 

https://woman.mynavi.jp/article/160428-3/

 

 

前後して図書館に予約をお願いしていた彼の書籍がいくつか確保できたので、東京遠征中に読むのを楽しみにしています。

ではでは、よいお休みにしてくださいね。