直木賞作家・辻村深月の同名ベストセラー小説を、「河童のクゥと夏休み」「カラフル」の原恵一が監督を務めて劇場アニメ化。

中学生のこころは学校に居場所をなくし、部屋に閉じこもる日々を送っていた。そんなある日、部屋の鏡が突如として光を放ち始める。鏡の中に吸い込まれるように入っていくと、そこにはおとぎ話に出てくる城のような建物と、6人の見知らぬ中学生がいた。そこへ狼のお面をかぶった少女「オオカミさま」が姿を現し、ここにいる7人は選ばれた存在であること、そして城のどこかに秘密の鍵が1つだけ隠されており、見つけた者はどんな願いでもかなえてもらえると話す。

若手女優の登竜門として知られる「カルピスウォーター」のCMキャラクターに起用されるなど注目を集める當真あみが、オーディションで1000人以上の中から主人公こころの声優に選ばれた。「百日紅 Miss HOKUSAI」などでも原監督と組んだ丸尾みほが脚本、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」のA-1 Picturesがアニメーション制作を担当。









 

 

あなたにとって学校とは、どんな場所でしたか?

この問いに「楽しいことしかなかった」「みんなと仲が良かった」そう答えたのでしたら、あなたにこの本は必要ないのかもしれません。

ニュースでは、いじめによる不登校という言葉が連日報道されています。

  • 不登校という勇気を持てた人
  • 学校に居場所がないと思っていた人
  • そして何とか大人になって今でもあの時の痛みを抱えている人

『かがみの孤城』は過去と、現在のあなたを救う物語です。

あなたを、助けたい。

単行本が出たときに、帯に書かれていた言葉です。

読んですぐ思ったのは、中学生の時に読みたかったという惜しい気持ち。

ですが、こうも思いました。

「中学生の頃の自分を救ってもらった」

悲しみは、なかったことになんてならないし、受けた傷が消えることは決してありません。それでも生きていかなければならないから、私たちは、救いを必要とします。

主人公のこころは、物語の最後にある決断をします。

傷は消えることはありません。受けた傷とともに前へ進みだしたこころを見て、私は、どうしようもなく助けられたことに気が付きました。

逃げる勇気

逃げずに闘うことが偉いと言われる風潮があります。簡単に頑張れ、と言われることも。

でも、時にはどうしようもない場所から逃げることも必要です。

特に、学校という場所はとても狭く、そこだけが世界の全てのような気がしていました。

こころたちは「かがみの孤城」に居場所を見つけ、逃げる勇気を持った仲間たちとともに成長していきます。

逃げることで闘っている、自分を護っているのです。

喜多嶋先生が言ってくれた言葉は、だから、こころにも私にも強く響いたのだと思います。

散りばめられた伏線

何といっても、辻村作品の素晴らしさは、ラストの伏線回収にあります。

こころたちの何気ない会話、行動、油断して読んでいたら何度もページを振り返ることになると思います。

その謎解きの瞬間、他の小説では経験することの出来ない心地良さがあるところが、また不思議です。

二転三転することはもちろん、最後の最後まで気を抜かないで読み込んでほしいと思います。

現在を救う

『かがみの孤城』を読む人が、中高生でしたら、リアルタイムで励ましてくれるのだと思います。

私のように大人になってからこの物語に出会う人は、過去の自分だけでなく、現在の自分も救われることでしょう。

過去にあった嫌な出来事は、大人になっても覚えているものです。

普段は平気なふりをしていても、忘れることなんてありません。過去が、今の私を否定しているような気さえしていました。

そんな時に読んだ今作品は、学生時代の閉塞感やどうしようもない人間関係が、まるで自分の過去を見ている気分になるくらいリアルなものでした。

苦しくなりながらも読んでいくと、あの頃言って欲しかった言葉、昔した自分の決断の正しさ、それは、現在の私を肯定してくれるものでした。

大袈裟なんかじゃありません。自分の気持ちをこれほど分かってくれた物語が、これまであったでしょうか。

色々と考えさせられる作品ですね。色んな年代が観られそう。