実際に起きたセクシャルハラスメント事件をモチーフに、その後日談として創作された会話劇。ホテルチェーンに勤める大庭早紀は、密室で上司からセクシャルハラスメントを受ける。

事件はすぐにホテル内外に知れ渡り、SNS上でも炎上する事態に。ホテルの同僚スタッフたちは職場の暗い雰囲気を変えようと、大庭を誘って湘南の社員用保養所への小旅行を企画する。しかし大庭は旅先でもスマホに張り付き、ネットをひたすらチェックしている。

同僚たちは彼女を励まそうとするが、やがてSNS上でバッシングをしているアカウントが同僚である可能性が浮上。疑心暗鬼に陥った彼らは、互いに腹を探り合うが……。「フタバから遠く離れて」などドキュメンタリー作品も手がける舩橋淳監督が、事件をフィクションとして再構成。舞台設定のみを与えられた俳優たちが即興に近い演技でリアルな会話を繰り広げる。

ガーベラセクハラ事件の後日談描く「ある職場」 撮影場所がなかなか見つからず

第33回東京国際映画祭で観客賞の対象となる「東京プレミア2020」に選出された「ある職場」が11月4日、TOHOシネマズ六本木ヒルズでワールドプレミア上映された。脚本、撮影、録音、編集も手がけた舩橋淳監督は「このような大きな劇場で、こんな小さな小さな映画の世界初上映の機会をいただき、本当に感謝を申し上げたい」と感無量の面持ちだった。

あるホテルチェーンの女性スタッフが上司からハラスメントを受けたという実際の事件をベースに、その後日談をフィクション化。事件を隠ぺいしようとする上層部に加えて、ネットやSNS上での誹謗中傷が広がる中、人間関係に亀裂が走るスタッフたちは、関係改善を目的に、湘南にある社員用保養地へバカンスに出かけるが……。ジェンダー平等の後進国とされる日本で、あるべきジェンダーバランスの姿を問いかける。

本作の製作を前に、当事者への取材を重ねた舩橋監督は「最初はドキュメンタリーで撮ろうと思ったが、皆さん、名前や顔は出したくないと。(取材を通して得た)いろんな感情や熱量をフィクションとして表現させてもらった」と作品の誕生秘話を披露。同席したプロデューサーの伊達浩太朗は「変わったテーマの作品なので、撮影場所もなかなか協力していただけなかった。それを乗り越えて完成させた作品をお届けすることができた」と安どの表情を浮かべていた。

舞台挨拶には舩橋監督と伊達プロデューサーに加えて、出演する平井早紀伊藤恵山中隆史木村成志万徳寺あんり藤村修アルーノル吉川みことが勢ぞろい。それでも、舩橋監督によると「実は14人の俳優が頑張ってくれたんですが、コロナ禍の影響で今日は全員登壇できず、(登壇者を)ジャンケンで決めた(笑)」といい、難役に挑んだ俳優陣の奮闘を称えていた。

出演者のひとりである平井は、「この作品に出演し、たくさんのことを学ぶことができた」と初々しい挨拶。共演する伊藤は「東京国際映画祭は以前から大好きな映画祭。まさか自分がこの場に立っているなんて、本当に信じられない気持ち」と声を弾ませ、「この映画は皆さんの身近で起きている出来事を描いています。私たちはハラスメントを経験した方々の思いをお借りして、演技を通して代弁した。何か考えるきっかけを作れれば」とアピールしていた。



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