やはり、おばさまは


首をたてに振ってくれず・・・。


家族は打ちひしがれる。

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先日の、ショートステイ問題。


それなりに、私から話をしてみようと試みた。




お互いが窮屈でないように。


おばさまにも、息抜きする時間がいること。


こちら家族の都合については触れなかった。



「そうやね」と いうものの。


「じゃぁ、ヘルパーさんに伝えるね」 と念押しすると


「・・・・・」無言。


しかも、怖い顔で。



なんで??


行ってくれなくちゃ、私たち家族の身がもたないのよ。

しんどいのよ。

みんな、いらいらしてるのよ~~~~~~。


と、心の中で叫んでも。


おばさまは、「うん」といわない。



この日はあきらめて、後日強行しようとしていた矢先・・・。





ヘルパーさんから、電話。



「やっぱり、嫌だとおっしゃって・・・」



「困ります・・・」と母


「でも、高齢なので、無理にしてもストレスが・・」



正直、家族のストレスはどうでもいいの?



ヘルパーさんも、ご存知のはず。


私たちの複雑な関係を。



なのに、おばさまを尊重???



しかし、

やさしい母は、「では、今月はキャンセルしてください」 と



言ってしまった。



そして、それから私にボヤく。


ボヤく。


ぼやく。


毎日ボヤく・・・。



「あ~、外食したいっ」


「温泉に行きたいっ」


「ゆっくり、朝寝坊したい」



それを聞いているのも腹立だしく・・・。




おばさまの、 「嫌っ」 の 一点張りにも腹が立ち。



「なぜ、行ってくれないの!!!」 と叫びたくなる。



みんなが、穏やかに過ごすためには必要なことなのよぉぉぉぉぉ。



なのに、なぜ嫌なの?



理由も言えないくせに。




それ件以来、ちょっとおばさまの世話が嫌になっている。





おばさまは、極力電気をつけない。


むかしの人だからだろうか。


それとも節約家なのだろうか・・・。

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ある日、ただいま~と買えると、


異常にバカでかいテレビの音が聞こえる。



あぁ、おばさまは帰ってきているのだな。


起きているのだなとわかる。



部屋をのぞくと、


真っ暗でテレビだけがついている。


なんだ、寝ているのか。



そう思い、おばさまの部屋へ入り、テレビを消そうとすると


暗闇におばさまが座ってこっちを見ている。

というか、テレビを見ている。



「ひぃっ!!」



おばさまとわかっても、驚く。



「おばさま、暗いなぁ。電気つけるよ」と


私がいうと、


「ひゃぁぁぁぁぁ。いたんか」 と驚く。




こっちが怖いわ。



「そうか?暗いか?」



暗いかって・・・・。


真っ暗なんですけど。

おばさま、妖怪に見えるんですけど・・・


じっと座って身動きしないその姿は、怖いよぅ。

テレビの光がぼぉっと、おばさまを照らして



怖いよっ!!



「電気つけるよ」とつけると



「いやぁ。あかいなぁ」 →明るいの意



「電気いらないの?」



「暗いほうが、テレビが良く見える」



なるほど、映画館的にね。


理解はするが、

やっぱりいやだなぁと思い、電気をつけたまま去る。



すると背後から、


「いやぁ、あんた電気つけてくれたんか」



「ありがとう」


「テレビが良く見えるわ」



へっ???





どっちでもいいらしい。










高齢になると涙もろくなる。


しかし、認知症と重なって出るときは


ちょっと手間がかかる。

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朝、いつものように


「おはよう」 と おばさまの部屋をのぞくと、



「ちぃちゃ~ん」


ボロボロ涙を流して、駆け寄ってくる。


抱きつかんばかりに・・・。



朝っぱらからなので驚いた。


氷のような手で、私の両手首をつかみ

大粒の涙をこぼしている。



普通なら、「どうしたの?」とやさしく声をかけ、

背中をさすってあげるのだろう。


でも、私は驚きながらも、冷静で。

起きていることの意味がわからず呆然と立ち尽くしていた。



どうしても、背中をさすることはできない。

私たちに距離があるのだ。ごめん。


そうしている間も、おばさまに掴まれた手首は、

おばさまの体温でどんどん冷やされていく。



「どうしたの?」 と聞いてみる。



「お母さんが・・・」



「お母さんが? 何かあったの?」



「出て行ったぁ」



・・・・?????



何を言っているのだ?


母は仕事に出かけたのだ。

それの何が哀しい??



「帰ってきてくれはるか?」



何を言っているのかさっぱりわからない。

また、認知症がでている。



「仕事にいったんだよ」


「お母さんは、毎日いってるやん」



「そうか」といって、

私をベッドに座れと誘導する。



おばさまが掴んだ私の手首は完全に冷え切り、

体が一気に冷えて、肩が凝ってきた。頭痛もおきてきた。



「あんたらが、よくしてくれて、すまないと思うてるのや」



「・・・・・・・・・・」


「何か、困ったこととか。嫌なことでもあるの?」




「何もない。ないけど・・・」



「ないけど、何?」



「ないねんけど」



「あるんでしょ。教えて」

いらいらしてきた



・・・・・・・・沈黙。



「お母さんもあんたも出て行ったら、どうしようと思うて」



???



おそらく、先日のショートステイのことだ。

おばさまは、勘違いして、「ショートステイ=介護施設に入る」 と思っている。


私たちが、おばさまを介護施設に入れようとしているのだと

思い込んでいて、それが恐怖心となって、


認知とごっちゃになって、不安になっている。



「・・・・・」



ため息をつきながら、

「おばさまの言っている意味がわからないよ」


「お母さんは、仕事。仕事が終わったら帰ってくるよ」

「誰もどこもいかない」


「おばさま。朝ごはんまだでしょ?」


「食べよ」




そういって、食卓へ移動すると



さっきの涙はどこへやら?



おいしそうに、お味噌汁を飲んでいるではないか!!




私に冷えだけ残して・・・。