男性として生まれた8歳の”私”。だけど、男の子の名前で呼ばれるのはいや。いま、柔らかな陽光の中で願いは輪郭を強めていく。
夏のバカンスでフランスからスペインにやってきたある家族。
母アネの子どものココ(バスク地方では“坊や(坊主)”を意味する)は、男性的な名前“アイトール”と呼ばれること(※1) に抵抗感を示すなど、自身の性をめぐって(※2) 周囲からの扱いに困惑し、悩み心を閉ざしていた。 叔母が営む養蜂場でミツバチの生態を知ったココは、ハチやバスク地方の豊かな自然に触れることで心をほどいていく。
ある日、自分の信仰を貫いた聖ルチアのことを知り、ココもそのように生きたいという思いが強くなっていくのだが……。※1 自分の名前を変更したトランスジェンダーやノンバイナリー、ジェンダークィアといった人々について、他者が話したり、本人に呼びかけたりするとき、出生時につけられた名前を使うことをデッドネーミングと言います。一般的に、名前からその人のジェンダーが推測される習慣があります。本作で主人公のココは、男性的な名前・あだ名で「呼ばないでほしい」と訴えますが、呼んでほしい名前が定まらなくても、性別違和を訴える相手が傷つかないよう配慮するのが望ましいでしょう。
※2 子どもに限らず、性別違和を抱いたり訴えたりする場合、トランスジェンダーだけでなく、ジェンダー・ノンコンフォーミングである場合もあります。これは、本人が認識しているジェンダー・アイデンティティやジェンダー表現(髪の毛長さ、服装、振る舞いなど)が、社会から期待されている「女らしい」「男らしい」といった規範が一致しない状態を指します。ジェンダー・ノンコンフォーミングの人には、トランスだけでなく、出生時に割り当てられた性別から移行しないシスジェンダーにも存在します。
(引用元:公式サイト)
鑑賞日 2024年1月17日(水)
製作年 2023年
製作国 スペイン
言語 スペイン語 日本語字幕
尺 128分
公開日 2023年1月5日(金)
原題 20.000 especies de abejas
レイティング G
配給 アンプラグド
スタッフ
監督・脚本 エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン
製作 ララ・イサギレ・ガリスリエタ、バレリー・デルピエール
主なキャスト
ソフィア・オテロ:ココ(アイトール)
パトリシア・ロペス・アルナイス:アネ(ココの母親)
アネ・ガバライン:ルルデス(アネの叔母)
概要
感想
とてもデリケートな内容を描いていますが、
ココ(アイトール)を演じたソフィア・オテロの
ナチュラルで繊細な演技と表情がよかったです。
ココは男の子に見える瞬間、
女の子に見える瞬間、どちらもあり、
見る側としても複雑な気分になりましたが、
揺らぐ心とちょっとずつ成長していく様子と
心境の変化が伝わってきました。
幼い8歳のココが抱える悩みに
家族のみならず、親せきや周辺の人物を
巻き込んで大事になってしまいます。
ココの母親もまた、
自身の去就について迷っていて、
ココの悩みを持て余している感がありました。
バカンスで訪れた先で、
養蜂をしている叔母さんがココの唯一の
理解者みたいな状況になっているのは
微笑ましくも、母親がちょっと不憫でした。
ココが叔母の理解力やハチの生態から学び、
成長し、母親を悲しませたくないと、
気遣うようになった姿は切なくも美しいです。
ココの仲良しの女の子がココに話したある内容が
ココにとっては救いとなるものでしたが、
これは単なるセリフではなく、
演じた女の子自身が実際に話した内容とのこと。
子供は大人が思うより賢くて、優しい、
というのを感じるシーンでした。
ソフィア・オテロはオーディションで選ばれ、
映画に初出演にして主演したとは思えない、
堂々たる演技で、今後も楽しみです。
性別区分がない俳優賞が新設された(2020年~)
ベルリン国際映画祭で、
2023年にソフィア・オテロが
最年少の9歳で
最優秀主演俳優賞を受賞したことも話題ですが、
31年ぶりの新作『瞳を閉じて』が
もうすぐ公開ということで
話題になっているビクトル・エリセ監督の
『ミツバチのささやき』(1973)に出演した
アナ・トレントを彷彿とさせる、
とも言われてもいるようで。
そういう世間の評判はさておき、
今後ものびのびとしたナチュラルな演技を
見せてほしいです。