代表の古川です。

 

来週日曜(212日)に八王子夢街道駅伝が開催されます。私は今年も八王子南ロータリーチームで2区を走ります。

昨年の大会では,季節外れに気温が20℃まで上がったため,前半でバテてしまって後半ペースを維持できず,26.2kmでタイムは2717秒と不本意な結果でした。チームも3区で足切りとなってしまい,悔いが残りました。今年はペース配分に気をつけて走ります。

 

さて,遺産分割における預貯金の扱いについて,昨年1219日に最高裁判所は,預貯金も遺産分割の対象となるとの決定を下しました。

決定全文:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/354/086354_hanrei.pdf

 

これまでの判例(最高裁判所の裁判の先例)では,預貯金については,被相続人の死亡により相続人らに当然に分割されるのであって,遺産分割の対象とはならないとされていました。

そのため,理論上は,遺産分割協議が成立する前でも,法定相続人はその法定相続分に応じて金融機関から被相続人の遺産である預貯金の払い戻しを受けることができました。

しかし,実際は,相続人間のトラブルに巻き込まれるのを怖れてか,遺産分割協議前に金融機関が法定相続分の払い戻しに任意に応じてくれることはほとんどなく,払い戻しのためには金融機関に対する裁判をする必要がありました。

 

 

写真は最高裁判所の外観(裁判所のウェブサイト:http://www.courts.go.jp/saikosai/index.htmlより引用)

 

昨年受任していた遺産分割の案件で,亡くなった母親の財産が,その生前,長男名義の預金口座(本件預金口座)に移されていることが疑われるものがありました。そこで,二男等から依頼を受け,遺産分割の前提として,長男に対し,本件預金口座が母親の遺産であることの確認を求める訴訟(確認訴訟)を提起していました。

しかし,東京高等裁判所は,昨年8月,本件預金口座が母親の財産の管理口座であるとしても,これまでの判例によれば預貯金は遺産分割の対象とならないため,本件訴訟には確認の利益がなく不適法であるとの判決を下しました。つまり,本件預金口座が母親の財産であったならば,銀行に対して直接払い戻しを請求すべきであると判断しました。

そのため,二男等は昨年12月初旬,銀行に対して,本件預金口座から二男らの法定相続分を払い戻すことを求める訴訟(払戻訴訟)を提起しました。

 

その後,昨年1219日に上記最高裁決定が下されたため,預貯金も遺産分割の対象となることとなり,払戻訴訟は,遺産分割協議前に預貯金の払い戻しを求めるものとして不適法な状態となりました。そこで,やむなく払戻訴訟は取り下げることとし,改めて長男に対する確認訴訟を提起することになりました。

払戻訴訟の際に裁判所に納めた印紙(約44万円)については,銀行の答弁前であったため半額は戻りますが,改めて提起する確認訴訟にも約84万円の印紙が必要となるため,今回の判例変更により二男等に約22万円の損失が生じます。そもそも,前回の確認訴訟で名義預金か否かの確認ができていれば,改めて確認訴訟を提起する必要はなかったので,二男等には合計約106万円の損失が生じていることになります。時間的なロスも計り知れません。

 

今回の最高裁決定は,結論としては妥当だと考えていますが,判例変更によって不利益が生じる人への配慮も必要なのではないでしょうか。

 

 

写真は最高裁判所の大法廷(EY Tax Insightsのウェブサイト:https://taxinsights.ey-vx.com/archive/archive-articles/tax-on-trial.aspxより引用)