.

.

tomorrow〜scene43〜

.

.


「後、頼むな…」

.

明日美さんとの話しは終わったんか、俺の元へと歩いてきて、そう言ったやましょーさん。

.

「…はい」

.

2人の話しが何やったとか、前までやったら気になって仕方なかったのに、この日はそういうのは全くなくて。

.

.

『自信があるから』 

それは、彼女の気持ちが自分に向いてる『自信』じゃなくて、彼女を思う自分自身に対して『自信』があるから。

何があっても揺るがないって。

.

.

でも…。

今それを押し通す事がいいのかどうかは、まだ決められずにおる。

.

ふーって小さく息を吐いて、明日美さんに向かって歩き出すと、雲がかかってた夜空から、 真っすぐに月の光がさしてくる。

.

暗かった足元…まっすぐに彼女に向かって光が伸びてく。

それを辿るように彼女の前まで。

すっと背筋を伸ばして、その瞬間を迎えた。

.

.

.

明日美 side

.

.

真っすぐに私に向かって歩いて来て、足を止めた壱馬くん。

この状況に、何か言葉を発していいのか、黙って待ってたらいいのかがわからなくて息ができなくて。 

そんな私を見てふふって笑うと、引かれた右手。

.

ぎゅって抱きしめられると「逢いたかった…」って小さく聞こえる。

.

.

「ん…ただいま、壱馬くん」

.

「いつかみたいに走って抱きついてきてくれたらよかったのに(笑)」

.

「そんなん無理やって。ドラマちゃうんやから」

.

「そう?俺全然そういうんできるけど?」

.

「嘘や!」


ぱって体を離すと、意地悪な顔をして笑う。

.

.

.

「どうやった?ライブ」

.

「ん?楽しかった!壱馬くん、『歌、うまっ』ってなった」

.

「『大した事ない』って言われたら凹むやつやからな、それ(笑)」

.

「(笑)。後…ありがと。…最後のやつ。嬉しかった」

.

「…ん。あそこだけは、明日美さんへの言葉やった」

.

急に落ち着いたトーンになると、ゆっくり瞬きをして…その黒目に自分が映る。

.

.

「明日美さん?…帰ってきて?日本。…俺んとこに」

.

「…」

.

「仕事の事とか…それ以外も、そんな簡単に返事ができん事はもちろんわかってる。 

俺のわがままなんも、わかってる。

でも…それでも俺は、明日美さんと一緒におりたい」

.

「…」

.

「声が聞けただけで、こんながんばれるんやったら、側におってくれたら、俺、もう無敵やと思うんよ」

.

「無敵って(笑)」

.

ちょっとおちゃらけた事言うんかな…って思ったら、ぎゅって急に抱きしめられて、私の肩越し、大きく深呼吸してるのがわかる。 

.

.

「…側におってくれな、俺、無理なん。」

.

「…壱馬くん?」

.

「もう、限界なんよ…正直」

.

「…」

.

「ダサいやろ?…でも、そうなん。明日美さんがおらんの、もう無理やねんて」

.

.

背中に回された手でぎゅってもう一度抱きしめられると、自分が彼に必要とされてるんだって、それがしっかり受け取れた。

.

.

「ほんまは、かっこええ事言うて、キメてやろうって思ってたん」

.

「…ん」

.

「でも、そうやないなって、思い直した。ダサイ自分も全部見せよって…ほんまの俺はこうやから」

.

「…」

.

「ちゃんと目見て、伝えようって…」

.

「…ん」

.

「明日美さんには、明日美さんの仕事があって、居場所がある。 それはわかってる。大事にして欲しいって思ってる。 でも…俺の気持ちも知って欲しいん。

大好きやから…大切やから、一緒に居りたい。それを伝えたかったん」

.

「…ありがと、壱馬くん」

.

.

嬉しくないわけなんてない。

だって、私だって…。

.

.

.

壱馬 side

.

.

ドームでのライブ。 

周りからの期待、ファンの子からの期待。 

『絶対に成功させな…次に繋げないかん』

プレッシャーに気づかないうちに押しつぶされそうになってた。

.

そんな中…、少しでも彼女を感じたくて、毎日のようにしてた電話。

.

 .

『壱馬くん』って呼んでくれる優しい声。

『がんばりよー』ってよく聞いてた岡山弁に、張り詰めてた気持ちがとけていく。

自分が彼女に支えられてるのを実感する瞬間でもあった。

.

.

『ほんまは…今すぐにでも』

『手の届くとこにおってくれたら』

『ポンって背中を押してもらえたら…』

.

.

でも、それを伝える事が、俺が自分の意思を押し通す事が、ええかどうかはずっと迷ってた。

.

.

『彼女の夢を邪魔したくはない』

.

.

でも、彼女を腕に抱きしめた瞬間、迷いはキレイになくなってった。

.

.

.

.

『もう離れたくはない』

.

.

.

.

…next

.

.

.