if…〜scene4〜
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数日後
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『古着の良さを伝えたい!』
YouTubeならではの緩い感じ。
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それでも成り立つのは、今俺の隣に立ってるのが、コイツやから。
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『壱馬で』そうお願いしたのは俺。
メンバーの中で一番、このジャンルから遠い存在やからこそ意味がある。
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「壱馬、古着、着る?」
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「や…ん…あんま…いや、嫌いやないんですけど…」 
肩身狭そうに、一歩下がる。
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「(笑)はっきり言うてええよ?着てるん見た事ないもん、俺」
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「ん…はい。すいません」
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申し訳なさそうに俯くと、『いや、何で俺なんやろ?ってなって』って鼻を掻きながら苦笑い。ほんまかわいい奴。
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今回、この企画で行こうって決まった時。
せっかくやし、俺も『ハジメマシテ』な所に行きたくて。
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知り合いから紹介されたお店。
『マジでいいっすよ』って。
それもあって、今日を楽しみにしてた。
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都内から少し離れた街。
入口には、モノクロの看板と『店は2階』を現す矢印。
上から人が降りてきたら、すれ違えない幅の急な階段をあがってく。
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「こんにちは」
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「いらっしゃいませ」
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少し高い位置にあるカウンターから降りてきたその人と目が合った瞬間。
息が止まるっていうのは、こういう時に使う言葉。
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「しょーご…」
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何?ひょっとして何かのどっきり?って勘ぐってしまう位の衝撃。
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「知り合いですか?」
カメラ回ってるにも関わらずスタッフさんのその声に「あっ、高校の時の…」って普通に返してしもうて。 撮影中やって事すら、頭ん中から消えてた。
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「えっ、やばっ。やばくないっすか、それ」
って俺の後ろから聞こえる、ワントーン上がった壱馬の声。
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黒目の大きい瞳をいつもよりパチパチさせると、ないはずのしっぽすらそこには見えるがした。
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壱馬 side
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やましょーさんのYouTubeの番組に呼んでもらってたその日。
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『古着の良さを…』
興味がないわけやない。
でも、こういうのって、ほんまに好きな人からしたら、俺みたいなんが『わーわー』言うんは、違うってわかるし。
何で、慎やたっくんじゃなくて俺なん?とも思うし。
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でも、やましょーさんが、『壱馬を指名で』っていうのは単純に嬉しかった。
ほんまの兄ちゃんみたいに慕ってる存在。
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「じゃあ、いきますか」
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小さいカメラが回り始めて、やましょーさんの後ろをおっかけて店の中に足を踏み入れた。
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「こんにちは」って、控え目に挨拶をすると「いらっしゃいませ」って声と同時に俺らの前に現れたネイビーのキャップを目深に被ったその人。
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白いTシャツに、大き目のシャツを羽織って。メンズサイズのデニムにスニーカー。
 無造作に、袖を持ち上げると、細くて白い腕にレザーのブレスレットが巻かれてた。
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「しょーご…」
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『いらっしゃいませ』の次に出た言葉に、耳を疑ったのは、俺だけやない。 
カメラを持った、スタッフさんの「知り合いですか」って言葉。 
「高校の時の…」ってやましょーさんの返事。
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こんな事ある?
やましょーさん、『今日、初めて行く店なんよ』さっきタクシーの中で言うてた。 
偶然にも程があるっていうか。仕込みでも、ここまでなんかないっていう仕上がり。
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「えっ、やばっ。やばくないっすか、それ」
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もう、そうとしか言えなかったし、テンションあがったのも事実。
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「えっと…、ちょっと一旦止めて」
カメラを止めると、「ちょっ、待って。何?これ…えっ?」 自分を落ち着かせるように、深呼吸をすると、「明日美、ちょっ、こっち来て?」って彼女を手招きしたやましょーさん。
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「マジ、えっ?ここ、お前の店なん?」
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「ん。…びっくりしたんやけど…彰吾が入ってきて」
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「やましょーさん…あの…俺にも…」
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2人の会話に入るんはどうかと思ったけど、でもスタッフさんも困るやろうし。
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「あっ、すまん。今、えっと…、高校の同級生で…明日美」
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「初めまして、明日美です」
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「あすみ…さん」
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「こいつの名前な、明日が美しいって書いて、あすみって読むんよ。めっちゃ、よくない?」
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「それ、もうええって、彰吾。恥ずかしいわ」
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「えっ、めっちゃいい名前やないですか?」
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「やろ?お前もそう思うよな?」
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「ん、はい」
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単純にほんまにそう思う。
その名前をつけてくれた人の願いが、素敵やって思うから。
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「もう、ええから。ほら、撮影するんやろ?」
ちょっと顔を赤らめて照れたようにやましょーさんの背中を押す、明日美さん。
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 第一印象のちょっとキツそうなイメージが、変わってく。
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「明日美?何か迷惑になったりしても嫌やから、知らんふりしとけ、俺の事も、昔の事も。ええな?」
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「ん…わかった」
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「壱馬も、その感じで頼むわ」
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予防線を張ってるやましょーさんにとって明日美さんは、大切な人。そんな勘。
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こないだメンバーで『元カノが』みないな話しをしてたのを思い出す。
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『ひょっとしてこの人…』
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明日はお休みします。himawanco