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if…〜scene2〜
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「やましょーさん、メシ行きません?」
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「あーごめん。今日ちょっと予定あるんよ」
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「あっ…そうなんすか、そうなんすね…はい…」
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「来週また行こうや、な?ごめんて、壱馬」
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「大丈夫っす、はい…」

わかりやすく凹んだ狼さん。 っていうよりは、子犬。
細い肩が、一瞬でストンと落ちて俯いた。 
コイツの懐き具合は、きっと周りが見てもほんまわかりやすい位やと思う。 
悪い気は全然せんので?もちろん。 
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自分でも自覚ある位、『変わってる』俺。
 『ランペの BRAIN』って肩書と同じ位『サイコパス』ってパブリックイメージ。 
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そんな俺の後ろをついてまわってる壱馬。 
アーティストとしても、男としても、年下やけど尊敬でしかない後輩が、嬉しそうに俺の後ろをついてくるのを嫌な気がするわけなんかない。 
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でも、今日は…。
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「やましょー、今日同窓会なんやろ?」
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『今、何でそれをこのタイミングで言うんよ、陣さん』
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「えっ?岡山の時の。って事?何年ぶりっすか?」 
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「ん…まぁ。高校の時の…5年ぶりとかやな」
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 「元カノとか来たりするんすか?」
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ワラワラと集まってくるメンツ。
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「えー、見たい!やましょーさんの元カノ!」 
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「付いてく?ちょっと最初だけ顔出す?
みんなで。『お世話になってますー的な』(笑)」
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「あほか…」
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もう、こういう話しになると、一気にみんなのトーンが上がる。 あっと言うまに俺よりも明らかにでかいヤツらに囲まれてた。
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「もう、行くけん。ついてくんなし!」
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待ち合わせにはまだ早いのに、質問攻めに耐えかねて、かばんをひっつかんで事務所を後にした。
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事務所の前、停めたタクシーに乗り込んで、確認した1週間前のLINEのやりとり。
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相手は、幼馴染の修二(しゅうじ)。
『親友』、『悪友』。俺の18までの記憶には、いつもこいつがおる。今回の集まりの主催者。
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《同窓会、誰来るん?》
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《ちょっと今、色々確認中。こっちにおるやつ、適当に声かけて、後はそいつらのツテしだい》
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《円、来るんやろ?》
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《おん、もちろん》
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修二と円は高校時代から付き合ってて、いつ結婚してもおかしくない2人。
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『付きあっって5年以上も経つとな、逆にきっかけが難しいんよ』って前会うた時に言うてた。
なんとなく、その感じはわからんでもないけど。
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《明日美も来るって、言うてたで。
 それ聞きたかったんやろ?円の事聞くって事は》
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《ちゃうし》
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その後送られてきた、悪い顔したスタンプ。
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マジこいつ…。
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そこで終わったLINEのやりとり。
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『明日美が来る』
そう、聞きたかったんはそれ。
修二には見透かされとる。
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高校卒業と同時に岡山を離れたって話しは聞いてた。 でもそこからの行方はわからんくて。 
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俺も RAMPAGEになるタイミング。 
自分の事以外……仕事以外の何かに目を向ける余裕なんて全然なくて。 
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デビューしてようやく、周りが見れるようになったのは最近。
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そんな時に降って湧いた同窓会の話。
一番に頭に浮かんだ彼女の顔。
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毎日、仕事の帰りに電車に乗る前、駅の窓を鏡代わりにして踊ってる人の姿を見ると、あの日の自分と重なる。
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そして、その時の記憶にはいつも彼女がいて。
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『好き』って言葉で形容するのとは、違う。
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でも間違いなく、今日俺が一番会いたい人やった。
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…next
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最初の部分、やましょーさんのお話が続きますが、主人公は壱馬です…。気長に導入部分を読んで頂ければ。 himawanco
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