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瞬き〜scene22〜
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「じゃあ、駅に18時半ね」
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「ん、わかった。夜、雨ふるらしいから、来る時、気つけろや。後、風邪気味なんやから、ちゃんとあったかくして来いよ」
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「ん、大丈夫。ありがと」
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「じゃあ、「いってきます」」
北人と一緒に家を出た。
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「楽しみだねぇ、お誕生日デート」

「まぁ、そりゃな」
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「否定しないんだ。いーなー。みんなデートじゃん」
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「北人は?今日どうするん?」
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「まぁ、色々…それなりに?」
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『あの子はどうにでもなるから』スミレさんが言ってた事が頭に浮かぶ。
まぁ、俺らだけ楽しむのは申し訳ないし、北人も楽しいならそれでええかなって。
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「おはようございます」
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 「おはよう、川村くん」
 いつも通り、フロアの右奥の席にいる燈子さんが、顔をあげて挨拶をしてくれる。
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「燈子さん、今日定時で帰ってもいいですか?…忙しいのに、すいません」
一応断っておかんとな…と。彼女隣に立って、小さくお伺いをたてた。
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「ん?もちろん。じゃあ、私も今日は早く帰ろかな。 いつもお迎え最後で、最近ご機嫌斜めで、うちのおぼっちゃん(笑)
 どしたの?…あっ、デート?」
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「やっ、ん…彼女誕生日で」
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「こないだの?」
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「ん」
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「そっか、じゃあ今日はさ、外回り一緒に行って、そのまま直帰にしちゃおっか」
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「ええのん?」
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「たまにはいいでしょ。じゃあ11時には出るから、準備しといてね」
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「はい」
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この間の展示会、思ったよりもレスポンスが早くて、ほんまはめっちゃ忙しいはずやのに。
俺が気を遣わんでええように、そう言ってくれてる。ちゃんとわかってるから。 
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燈子さんは、そういう人やもん。
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つぐみ side
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.「えーもう、わかんない!!」
誕生日だからって周りのスタッフが気を遣ってくれてお休みをくれたその日。
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クローゼットの中身をひっくり返して、着ていく服を物色中。
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スミレちゃんもお休みだって聞いてたから、洋服一緒に選んでもらおうと思ってたのに。 
なんならスミレちゃんの洋服を…大人っぽいのもいいかなって思ったから、貸してもらおうと思ったのに。
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「ごめんねっ、つぐみちゃん!」
って慌てて仕事に出かけてった。
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急な呼び出し…スミレちゃんにはよくある事。 
その後、樹もすぐに出かけてったし。
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もぉ…どうしよ。誰に相談したらいいのよ。
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かたっぱしから着てみたものの、もう何がいいかわからなくなって、頭の中はフリーズ。 
壱馬はスーツだよね。
じゃあ、それに合わせる感じの方が…一応、誕生日だもんね。
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「あっ!」
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それを急に思い出した自分を本当に褒めたい!
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 去年の誕生日にスミレちゃんと樹が買ってくれたオーガンジー生地のブラウス。
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背中に大きなリボンがついてて、かわいかったのに、去年は秋がなくて、着るタイミングがないまま終わったんだった。
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「やっぱり、かわいい!これ!」
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あの2人の選ぶ洋服のセンスは、ほんと素敵。 
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アイボリーのブラウスに、ブラックのティアードスカートを合わせて。
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「デートっぽい!!ん、いいっ!」
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くるっと鏡の前で回ると、スカートがひらひらってなって、ちょっとお姫様気分。
自然にふふって笑っちゃう。
いつもとはだいぶ雰囲気が違う気がする。
特別感ありっ。
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「ちょっと寒いけど、この背中のリボンがポイント…上着着たらもったいないよね」
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メイクもいつもよりもちゃんとして、普段しないアクセサリーもしてドアを開ける。 
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『可愛いな』って言ってくれるかな…壱馬。
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…next
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