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空色ポスト〜scene17〜
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「俺、ちょっと散歩行ってきます」
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「気ぃつけてな」
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「はい」
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いい感じに出来上がってる3人を置いて、星がキレイに見える場所までやってきた。
いくら酒を飲んでも、今日は酔える気がしなくて。
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夜の山の9月の終わりは肌寒くて。
澄んだ空気で星がキラキラ煌めく。
ほんと、プラネタリウムの中にいるみたい。
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でも、そこにスマホを向けてシャッターを切っても、実物ほどキレイには撮れなくて。
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「こんなんじゃ、伝わんないし…」
この星を、スミレにも見せたかった。
いや、本当は…スミレと一緒に見たかった。
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カップルで見るように準備されてるのか、ちょうど星がキレイに見える場所に置かれたべンチ。
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「切なっ…俺」
そこに腰かけて真上を見上げる。
ほんとキレイ。東京じゃ見れないな、これ。
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『スミレ…ちゃんと帰って寝てるかな。メシ食ったかな…』 頭の中は彼女の事でいっぱいだった。
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「樹!」
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何?俺、酔ってるから? 幻聴が聞こえるの?
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やばいだろ…。
持ってたミネラルウォーターを一口飲んだ俺の耳に入る、スーツケースをごろごろひく音。
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「はっ?」
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さすがに幻聴じゃないよなって振り返ると、スーツケースを引きながら「樹!」って俺を呼ぶスミレの姿。
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「何?はっ?」
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「亡霊じゃないからね!ちゃんと、生きてるから!」
そう言って、俺の目の前までやってきた。
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「えっ?お前どうやってここまで?!もうバス…」
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「んー、タクシー!お金はね…あるから、私(笑)」
そう笑うと、俺の隣にストンって座った。
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「ほんとパンフレットのまんまだね。手伸ばしたら掴めそう」
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空を見上げて、両手を思いっきり広げてぐーっと背伸びをするその姿に、今まで俺がどんだけ…って思ったら、その温度差にちょっとイラっとして、棘ある言葉しか出なかった。
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「来れるならさ、連絡位、出来ただろ?」
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「ん」
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「タクシー捕まらなかったら、どうやって…」
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「歩いて?(笑)」
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「スミレ!!」
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茶化されてる感じが、やっぱり俺は『弟』なんじゃって思って、思わず大きい声が出た。
スミレにとっての俺って、揶揄って遊ぶ相手なのかって思ったら我慢出来なかった。
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「…本気だよ?捕まらなかったら、歩いてでも、来る気だった」
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「えっ…」
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「樹に会いたかったからだよ…?」
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言ってる意味がよくわからなくて、そこからの言葉が繋がらない俺に、空を見上げてたスミレの視線がこっちへと向いた。
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「樹に会いたいって思ったから、ここに来たの」
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真っすぐに俺を見る瞳に、コテージから漏れる光が反射して、潤んだ瞳からすーって涙が落ちてく。
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「…スミレ?」
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何でお前が泣くんだよ…って思うのに、それは言えなくて。
今はそれを言うタイミングじゃないって、思ったから。
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それを言ったら、俺らはまたいつもと同じな気がした。
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「『会いたかった』って言ってるじゃない…。
何か言ってよ。ねぇ、樹っ!」
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怒ってるのか、泣いてるのか、こんな風に感情を露わにする彼女を見た事なくて。
たくさん彼女の表情を見て来たはずなのに…こんな彼女を俺は知らない。
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「何か言ってくれたって…」
ゆっくり瞬きをしたその瞬間、彼女をぐっと抱きしめた。
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「バカなの?お前…」
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「バカって…「俺だって会いたかったに決まってんじゃん!!」
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彼女の言葉を遮って伝えた本音。 言葉にして伝えなきゃ意味がない。
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『俺だって会いたかった』って。
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俺の背中に回された腕にぎゅーって力が入るのを感じる。
嬉しかった…『必要とされてる』そう思えたから。
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『あの時、言えばよかったが一番ダサイと、思うよ?俺は』北人さんの言葉が頭を過る。
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ここしかない。
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…next
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