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sweet home〜last scene〜
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「パパ!ブランコしようね!」
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「ん。お砂場セットも、持ってこな。お山づくりしよ」
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「ん!」
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ピンクのTシャツに、デニム。
壱馬くんとお揃いのキャップ。
ん、かわいい。
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玄関で並んでスニーカーを履くその後ろ姿が2人そっくりで。
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「茜さん?どしたん?」
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振り返った壱馬くんが、「ん?」って私に聞く。
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何気ない、その「ん?」って聞く瞬間の表情がずっと大好きだった。
パタパタって走ってってぎゅって抱きつくと、あまりの勢いに壱馬くんがフラってなる位で。
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「わっ!何?何っ?!」
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「 壱馬くん!すっごく好き!大好き!」
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「ふふっ(笑)、何よ、どしたん急に」
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私の背中に手を回した彼が、ちょっと照れたように笑ってくれる。
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壱馬 side
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「ままは、あやとのなのぉ!」
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その声に下を向くと、ふくれっ面の俺のそっくりさん(笑)
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ほんま、自分で見ても、『俺の遺伝子強すぎやろ?』って位、小さい頃の俺でしかない。
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「『パパの』なのぉ!」
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ちょっと本気な口ぶりで言うと、一瞬で目に涙が溜まってく。
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「ままぁー!!」
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膝にくっついてる礼人をすって抱き上げた彼女が、「これこれ!モテモテだ、私。やった!」 って笑ってて。
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「礼人、ほら泣かないの。ね?ママ、大好きだから」
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「ほんと?」
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「ん、大好きだよ?今日ね…おっきいおにぎりね、作ったの。こーんなんだよ」
そう、右手を大きく伸ばすと、彼女の腕の中の小さい瞳がキラキラてってなる。
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この子の笑顔が間違いなく、 俺と彼女の一番の宝物。
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礼人を真ん中にして、手を繋いで向かった公園。
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「あっ、たんぽぽ!」
タタって走ってく礼人を追って、彼女が同じように駆け出した。
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「ほんとだね。キレイだね」
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「まま、はい。どーぞ」
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礼人が差し出したたんぽぽを、嬉しそうに受け取った茜さんの左手。
そこには『必ず幸せにします』 そう約束したあの日に送った指輪がある。
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『約束、守れとるかな…俺』
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「壱馬くん?」
俺を見上げるキャップの下の丸い瞳。
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「ん?どしたん?」
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「『めっちゃ好き』のリクエストいいですか?」
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「はっ?」
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「たんぽぽ見たら、久々聞きたくなった」
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「やからそういうんはさ…『あやと、ママすき!!』」
わが子に先を越された茜さんのリクエスト。
あかん、先いかれた!
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「ふふっ、ありがとね。ママも好きよ、礼人大好き」
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しゃがみこんでた彼女の腕を握って、すっと引き上げてそのまま引き寄せた体。
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礼人には聞こえない位の小さい声で、そっと囁いた耳元。
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「めっちゃ好きや…絶対負けへんのやから、俺」
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.「ふふっ(笑)ライバル強敵だよ?」
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「あほ、余裕じゃ」
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満足そうに笑った彼女。
不思議そうに俺らを見上げる礼人。
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足元にはたんぽぽの黄色が一面に広がる。

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「ねぇ、壱馬くん?…幸せだね」
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ん…、めっちゃ幸せ。

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sweet home
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...fin
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『チビ壱馬』が家族に加わるアザーストーリーでした。 この2人をずっと描きすぎやな、私。
次作がなかなか進まないのー!です(笑)気長にお待ち頂ければ…。

いつも私のお話を読んでくれる皆さんにたくさんの「ありがとう」を。himawanco