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sweet home〜scene10〜
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「寝たで?」
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「ありがとう」
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「今日さ、5分で寝かせたん。俺、すごない?」
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「何で?壱馬くんだけ。…何が違うの?
今日、お昼寝なかなかしなくて、大変だったんだから」
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「ふふっ。歌が下手なんやない?(笑)」
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「あのねっ、私、素人なの!壱馬くんとは違うの!」
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隣に座ったはずやのに、俺の言う事にちょっと怒ったんか、離れて座り直した茜さんをおっかけるようにまた隣にくっついた。
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「怒った?」
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「怒ってない」
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「ちょっと怒った?(笑)」
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「一ミリも怒ってません!」
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「ふふっ(笑)俺、ラーメン食べようかなぁー。1個だけ作るんもなー」
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覗き込んだ茜さんの顔。
少しずつ口元が緩んでく。
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「味噌ラーメンがいい、卵もいれて?」
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「(笑)了解」
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礼人が生まれても、茜さんは茜さんらしくあって欲しいってそう思うから。
その為には、夜中に一緒に食べるラーメンは、俺らには必要要素(笑)
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「「乾杯」」
ノンアルコールのビールで乾杯。
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『いいんだよ?壱馬くんは本物飲んだら。最近のノンアル、普通においしいから』
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茜さんはそう言ってくれるけど、まぁ外では普通にアルコールを飲むんやけど。
家でおる時は、彼女とお揃いのノンアルコールビール。
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俺は彼女と飲む酒が好きやから。
これでええんやって。
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ラーメン食べて、ノンアル飲んで。
2人でソファに並んで座って、まったりする時間。
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「あっ、茜さん?茜さんにもお土産あるで?礼人にはあひるさん買ってきたから」
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危ない危ない。忘れるとこやった。
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「ん?お土産?」
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「冷蔵庫」
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「冷蔵庫?」
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ラーメン食べ終わった後、冷蔵庫を開ける彼女の後ろ姿を見てると、「あっ!」って振り返って俺を見るキラキラした瞳。
どうやら見つけたらしい。
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「スフレプリン!」
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礼人にだけお土産買うと、みるみる機嫌が悪くなってくのをこないだ学んだ俺。
ちゃんと今日は買って来た。彼女の大好物。
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「いーの?」
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「ええよ。俺にもちょっとちょーだい」
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「ん、いいよ」
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スプーンを持ってダイニングに座ると『壱馬くん、いただきます』って手を合わせた。
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「安定においしい。やっぱりこれ!」
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「ふふっ、冒険はせんの?」
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「しないしない。これ一択。何事にも一途に!これ大切だよ!!」
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「ん(笑)何かめっちゃ壮大な話しになってる気するけど…」
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「そ?」
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『そうかな?』って食べ進めていく彼女は、きっと俺の分の『ちょっと』は忘れてる。
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「茜さん?俺は?」
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口を開けて隣に座ると「あっ、忘れてた。危ない。一気にいっちゃうとこだった」って。
ほら…やっぱり(笑)。
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スプーンに大きく乗せられたスフレプリン。
ん、確かにうまいな、安定の味。
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デザートも食べて、2人で向かい合ってお互い仕事。
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産休中やってのに、茜さんの元には、色々仕事の相談や何やらが来てる。
それを「仕方ないな…」って言いながら嬉しそうにしてるのは『頼られて嬉しい』ってそういう事。
俺もその感じわかるもん。
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俺も俺で集中してPCでの作業をしてると、急にわきばらをツンってされて。
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「っっった!何っ?!」
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隣に彼女がいたのに気づかんかった。 ふふって笑うと、俺の隣にストンと座る。
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「つかささんがね…」
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「ん?」
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「前、ライブの時に言ってたの。うちは、背中向けて別の事してても、それがよくて、何か安心するって」
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「ふーん」
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「私は、背中向けられたらちょっと嫌だなって…」
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「ん?」
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「向かいあってこうやって別の事してても、何かちょっかいかけたくなっちゃう位なのに 、背中なんて向けられたら、絶対嫌だなって思った」
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「ふふっ(笑)子供やで、それ。好きな子にちょっかいかけたくなるやつやろ?」
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「あー。ん、それ!」
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「茜さんが好きだった子、どんな子?」
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「『ほくとくん』…隣のクラスの」
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「その名前…何か嫌やわ、俺」
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「(笑)」
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陸さんとつかささん。
俺と茜さん。
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価値観も、相手に求めるものも違って当然。
やからこそ…出逢えた事がやっぱり運命なんやろなってそう思う。
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…next
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