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sweet home〜scene8〜
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「つかさ、今日ありがとね」
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「ん?いや…全然。久々に歌って踊る、本物の『RIKU』が見れて嬉しかったよ?私」
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「いつもは偽物みたいに言うなって?(笑)
今日いつもの3倍はがんばったし、俺。
…ちょっとは褒めて?(笑)」
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「3倍? もうちょっとがんばってよ」
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「はっ?!(笑)死ぬ…あれ以上は」

「(笑)」
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壱馬と茜さんと別れて、つかさのマンションへと向かう帰り道。
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「一番がんばってるとこをさ…」
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「ん?…なんて?」
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隣を歩いてた彼女が、静かに足を止めて。
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「陸がさ…一番がんばってるとこが見れて、明日からまた仕事がんばろって、そう思ったよ?私」
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「えっ?…ん」
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「今日、あそこにいた人、みんなそんな風に思って今頃帰ってるんだよなって思ったら、やっぱりすごいなぁって。陸は、すごいよ!」
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「どしたの?珍しい」
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ライブの感想とか、俺の仕事の事とか…いつもはその部分には殆ど触れない。
一言「おつかれ」って、それだけの日の方が圧倒的に多い。
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『がんばって』っていうよりは『できるでしょ?』って言うタイプの彼女。
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そういうドライっていうか、多くは言葉にしないとこが彼女の好きなとこ。
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自分でわかってる事を、周り言われたくないタイプの俺。
彼女は、ちゃんとそれをわかってくれてるって思うから。
多くは言わないで、それでも側にいつもいてくれる。
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空気みたいな存在…って感じ。
いるのが当り前で…きっとつかさがいなくなったら、俺は生きていけない。
大げさじゃなくそう思う。
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だから『いつかは…』そう思ってる。
なのに、そのタイミングがいつなのか、正直わからなくて。
何も言わない彼女に、甘えてる…でしかない。
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「茜さんさ、ちょっと私の周りにはいないレアキャラだった(笑) いい子だね。…真っ直ぐで。
壱馬くんにはお似合いだよ、ほんとに」
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「だろ?」
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「彼女にちょっと感化されちゃったかも、私」
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「ん?」
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「『言葉でしか、伝わらない事もあるから』だって。 私、そういうの苦手だから」
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「知ってる。今更だよ、それ(笑)」
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「でも、今日は、ちゃんと言おうと思って。『今だ!』って」
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「ん?」
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そう聞く俺の目の前にタンタンって寄ってきて、真っすぐに俺を見上げた。
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「素敵だった!陸しか見れなかった!」
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そう言って、「言っちゃった…」って俺の横を通りすぎて早足でカツカツ歩いてるその腕を掴んで、ぎゅって抱き寄せた。
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「…俺もちゃんと言うわ。
『今だ』ってそう思うから」
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「ん?」
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そっと離した体。俺もちゃんと…伝えたいんだ。
これ、絶対外しちゃだめなやつ。
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「つかさ…結婚しよっか、な?」
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今考えたらもうちょっと何か雰囲気のある言葉を…って思うのに、この時はこれしか言えなくて。
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彼女は瞬きを2回した後、ふふって笑った。
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「そうだね、結婚しよっか。陸」
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「あのさ…その返事、もうちょっと、何か他になかった?」
彼女に『感動の涙』はなくて、その代わりに、にこっと笑ってからそっと重ねられた唇。
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「苦手なの、言葉にするの。さっきのが限界MAX」
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知ってる…。
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口数は少なくて、ちょっと男勝りで。
最高にかっこいい、うちの彼女。
そんな彼女がずっと大好きで、大切だから。
それは、ずっとこれからも絶対に変わらない。
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「壱馬と茜さんに報告しなきゃな」
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「ん」
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「大騒ぎするよ、あの2人」
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「だね…、茜さん出産終わってからの方がいいかも。テンションあがって赤ちゃん生まれちゃいそうだもん、あの子」
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「(笑)だな。そこまで内緒にしとこっか」
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ジャケットの袖をキュキュって持ち上げて、早足でカツカツヒールを鳴らして歩く彼女の隣。
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手を繋ぐわけでもなく、同じ歩幅で背筋を伸ばして歩き出す。
俺らは、これでいい。
これが俺達だから。
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かっこいい奥さんの隣に相応しい、かっこいい旦那さんであり続ける事を俺は誓うから。
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つかさ?
必ず誰よりも俺はお前を幸せにできる。
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自信あるよ。

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…next
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勝手なイメージでしかないんやけど、陸くんが選ぶ人って、「かわいい」っていうよりは「かっこいい」な気がして。
壱馬&茜ちゃんとは、違う雰囲気を伝えたかった…大丈夫ですかね?(笑)
壱馬&茜ちゃんを何度も救ってくれた彼にハッピーを。himawanco

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