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「ただいま」
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夜22時。
歯磨きをしてるとこで、玄関が開いて。
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「おかえり」
って歯ブラシを咥えたままの私に真っ直ぐ向かってきた、黒いかたまり。
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『歯磨きしてるのわかるでしょ？』
なのにぐっと背中から抱きしめられて。背中に擦り寄せられる頬。
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「かず…ま？」
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「マジ、今日やり切った。今、HPゼロ」
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地方からのLIVE帰り。
間で海外もあって、なんだかんだで会うのは半月以上ぶりで。
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もう、今なら小学生でも余裕で倒せそうな雰囲気。
弱っちぃ。ほんとHPゼロ(笑)
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「ご飯は？」
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「ん」
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「お風呂入る？」
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「ん」
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「どっち？」
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「ん」
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何を言っても返事は、『ん』で。
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「壱馬？」
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「黙っといて、ちょっと。今、チャージ中やから」
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何か怒らせるような事したかな…、って思いながら歯磨きの続きをちょっと控えめにしてたら、「ふぅ」って小さくため息が聞こえた後、鏡越しに目が合う。
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「ごはん」
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「ん？」
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「ごはん食べます。食べてからお風呂で…お願いします」
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「…はい(笑)」
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何で敬語なのかはわかんないけど、疲れてるんだろうなってのはわかる。疲れすぎると、一気にテンション落ちるから。
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『私しか知らない』
『私にしか見せない』
…それが嬉しい。
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歯ブラシを置いて、うがいもちゃんとしてから、向き合って、ギュッて抱きしめた。
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「高速充電してあげる」
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「ふふっ」て笑う声が聞こえると、「マジこれ最強」って。
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ギューって抱きしめること数分。
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「壱馬？どう？チャージ完了した？」
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「今１３%」
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「嘘だぁ！全然できてないじゃん」
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「ちょっと漏電しとるかも(笑)」
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「こらっ、してない！」
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私の大きくなった声に、「マジになんなって…」って、緩んだ顔。
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一旦離されてた体が、またギュッて抱き寄せられて、耳元に響く大好きな声。
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「会いたかった」
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…fin
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ショート久々やな。むふむふするやつ。
タイ、楽しそうで何より。
どんだけガパオライス食べるんよ。
好きなものには、とことん。
ストイックと言うか、おこちゃまと言うか(笑)
himawanco