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結婚生活のすすめ〜scene11〜

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「ちょっ、壱馬くん?どしたの、その恰好」
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「や…。これで行こうと思って。茜さんの実家。
普通のスーツっていうんがよくわからんから、耕平さんにアドバイスしてもらって…おかしい?」
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「いや…見慣れないから。…七五三みたい(笑)」
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「はっ?」
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「いやっ、褒めてるよ?褒めてる!」
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「いや、27やで?俺。七五三は褒めてへんやろ」
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『ただいま』って声がしたから、玄関まで迎えに出たら、スーツ姿の彼がいて。
私が知ってる壱馬くんのスーツ姿っていうのは、きっと高いブランドで。
雑誌で見るような感じしか知らなかったから。
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リクルートスーツみたいなのを着たのなんて見るの初めてで。 髪も真っ黒でおろしてるし。
何か、幼さが…ん。
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思わず思ったまま言っちゃった…。
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「耕平さん、これでいいって言うてたし…」自信無さげに下を向いてブツブツ言うその感じが尚更5歳児で(笑)
これ以上言うと、手がつけられなくなる位拗ねるだろうから飲み込んだ。
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「いやっ、いいんだよ?正解はこっちだと思う。河村さんが言うなら間違いないから」
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「そ?…ならええわ」
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自信なさげな壱馬くんに近づいて、結んでたネクタイをキュキュって直すと、「ん?」ってすぐそこで合った視線。
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「ん?これやってみたかったの。旦那さんのネクタイをね、こうやって直すの」
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普通のサラリーマンの人と結婚するんだって、ずっとそう思ってたから。 毎朝スーツを着てる旦那さんのネクタイを直して…それがちょっと理想だった。
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「茜さん?」
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名前を呼ばれて上げた視線。軽く重ねられた唇。
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「ふふっ(笑)それさ…ここまでがセットやろ?」
ってちょっと照れて笑う壱馬くんに、ぎゅーって抱きついた。
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「おぉっ、どしたどした?!」
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「えー!もう、今の好き!今のすごく好き!!」
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何か理想が1個叶って…、
その事に『好き』を伝えたくなった。
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壱馬 side
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『茜さんの実家に挨拶に行く』
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結婚式の前にこれだけはどうしても譲れなくて。
籍を入れる前に、『彼女の実家に挨拶に行く』 それが普通やと思う。
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でもその普通ができないまま、『大丈夫、お父さんもお母さんもびっくりはしてたけど、でも賛成だったから』って先に籍を入れてしまって。
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休みの調整をして、彼女の実家へ向かう数日前。

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「耕平さん!頼みがあって…」
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結婚の挨拶に行くスーツ。
俺んちのクローゼットの中にそれはない気がして。
でも何が正解かもわからんで。
その「正解」がわかるんは、俺の知り合いには、耕平さんしかいてない。
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一緒に選んでくれたスーツ。
俺の不安を悟ってくれたんか、別れ際に
「大丈夫、壱馬くんの誠実さはちゃんと伝わるから」って、背中をポンて押してくれた。
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出来上がったスーツで向かった茜さんのアパート。
やっぱり彼女の評価は気になるから。
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そんな俺に抱きついてきて告げられた
『好き、すごく好き』
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彼女のこういう真っすぐな愛情表現。
ちょっとテレくさいけど、実はめっちゃ俺は嬉しい。
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知り合って、付き合って、結婚して。
一緒に積み上げてきた時間はそんな多くない。
だからこれから知っていく事の方が多いはず。
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彼女とのそれが、普通に楽しみで仕方ない。
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「サラリーマンと結婚したかったん?」
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「ん…そういうわけじゃないけどさ。何かドラマとかの影響かな。ぼんやりそう思ってた。
まさか芸能人と結婚するとは思わなかった」
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「…で?実際そうなった気分は?」
そっと離された体。
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見上げるその瞳に、くっきり俺が映る。
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「まぁ、大した事ないな」
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「はっ?」
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「ウソ、幸せだなぁって思ってる。すごく思ってる。毎日」
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「毎日?ほんま?」
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「ん…ごめん。週1位」
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「あんさ…」
そっから先を言おうとして、ふさがれた唇。
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あかん…俺めっちゃ幸せやん、これ。
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…next
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糖分多めにお届け(笑)自分でもニヤニヤしてまうな。 
明日、明後日はお休みします。

いってきまーす、広島2日間!

壱馬ー、会いにいくよー! himawanco


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