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still…〜scene21〜
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『正しい事が正解、そうじゃない事もある』
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言うてる意味がわからん。 
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いつもは何でもはっきり言うクセに、まどろっこしい誤魔化したみたいなその口ぶりに、ちょっとイラっとしたのは確かで。
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「どういう意味?それ…」
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きっと、俺のその雰囲気を感じ取った茜さん。
 グっと顔を上げた顔には、涙がいっぱい溜まってて。
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「えっ…」
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言い合いになっても、泣く事はほぼなくて。
怒って、わーわー言うのがいつもやのに。
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「こっそりでいいの!どこにも行かなくていいの!ずっと一緒にいたいの!!」
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そう言うと、彼女の瞳からはポタポタ涙が落ちてって。
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「やなのっ…、何でわかんないの?ねぇ!バカ!」
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両手で顔を覆うその丸くなった体をギュって抱きしめた。 
泣きたくないけど、『抑えられなくなる』 彼女が泣く時はそんな時。
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抑えきれなくなった、そういう事。
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「茜さん?あんな?」
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「いい! 今は聞きたくない!泣いてる時は話したくないの!」 ってぶんぶん頭を振る。
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「わかった。じゃあ、こうしとく。 落ち着くまで、こうしとくから。やから、聞いて?な?」
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まるっとなったその肩を抱き寄せて、ぽんぽんって背中を同じリズムで叩くと、 少しずつ落ち着いてくるのがわかる。
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息苦しそうに呼吸してたのが、俺と同じリズムになって…。
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「大丈夫?」
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ゆっくり体を離すと、「ん」って小さく頷いて、頬を拭った。
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「何が普通かはわからんけど…。
その概念は俺と茜さんでは違うかもしれんけど。 
でもな?お祝いしたいなって思ったん。 
おいしいもん食べて、どっか行って。
ずーっと一生 『初めての誕生日はこうやった』って思い出せる…。そんなんがな、俺はええなってそう思ったん。 
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…ちゃうかった? 茜さんが望む誕生日はそれじゃないん?」
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俯いてた彼女が、すっと顔を上げると、「ありがとう…でもっ」って。
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「嬉しいよ…その気持ちは本当に嬉しいのっ。
でも、『初めての誕生日がこうだった』が欲しいわけじゃない、私。
『毎年これだよね』それがいい。
ずーっと同じでいいの。一緒に居たいのっ。
それが一番望む事。だから…どこもいかなくていいのっ!」
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そう言って俺に思いっきり抱きついてくると
「でも、せっかくだから、ワインはいいの買って?高いやつ」 そう小さく呟いた。
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「ふふっ(笑)ええよ。高いのな。調べとくわ。
ってか、味わからんやろ?ワイン飲み始める時、いつもまぁまぁ酔うてるやん」
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「その日はワインからいくもん。最後にビールにする」
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「(笑)せやな。じゃあそうしよ」
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抱きついてきた彼女の背中にゆっくりと手を回した。
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「壱馬くん…?ウソじゃないから。…ずっと一緒にいられるのが、私は一番嬉しい」
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「ん…俺もそうやで?」
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あまりにも普通すぎて、そんな事?って思えるような俺らの願い。
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叶わなくなる日が来るなんて、絶対ない。 
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『毎年、誕生日これやん。ほんま変わらんな、ずっと…』
って笑いながら、一緒の時間を積み重ねていけるもんやって思ってた。
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…next
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こっから先何か起こるフラグでしかない…ですよね。 ベタな展開や😅 himawanco