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still…〜scene17〜
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「壱馬くん!昨日何で起こしてくれなかったの?ビール飲み損ねたじゃん!」
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ちゃんと仲直りした事に安心したのも一瞬。
また俺に向けられた、鋭い目。
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まぁ、それは本気やないってわかるから、『かわいいな、それ』でしかないんやけどな。言うたら怒るからそこは黙っとく。
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「たまには休肝日があってもええんやない?」
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「じゃあ、今日は昨日の分も飲んでもいいよね?」
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「…そういう意味じゃないと思うで(笑)」
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どんだけプラス思考やねんて。
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「壱馬くんっ!」
急に跳ねるように飛んできたその体。
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「うおっ、どしたん?」
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「何でもない。何でもないけどぎゅってしたい!」
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「ほんま、自由よな、茜さん」
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「嫌いじゃないクセに(笑)」
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「まぁな…大好きやろな、絶対」
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「えっ…」
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「(笑)顔赤いで、おねえさん?」
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そう言って覗き込むと、ばって俺から離れて、布団の中にもぐりこんだ。
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「茜さーん、どこですかぁ」
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「いませんよー、ここにはいません」
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ぱって布団をめくってそこにいる彼女を抱きしめて、また布団を被りなおした。
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真っ暗な布団の中で感じる彼女の 「ふふっ」って笑う声と、笑ってるだろうその顔。
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チュッて触れた頼。
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「そこじゃない!」
そう言って触れられた唇。
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二人だけのそのほんの小さい空間。
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何度もキスを交わして…。
大好きを伝えた。
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1ヶ月後…。
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「ほんと?私?えっ?行くの?」
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 「…ん。会いたいって、茜さんに」
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陸さんと北人に前々から言われてた
『茜さんとゆっくり話してみたい、紹介して』
 まぁ、社交辞令やろなって思ってたのに。
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「週末、お店予約しといたから」って、リハの最中、北人に言われて。
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「はっ?」
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「行こって言ったじゃん。紹介して欲しいって言ったよね?」
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「あっ…まぁ」
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「さすがに、全員一緒にいるとこに連れてくのはハードル高いだろうから?…だから今回は陸さんと俺。後は、メンバー分割して、少しずつみんなでご対面。少しずつね、慣れてもらお(笑)」
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「は?」
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いつの間にそんな話しになったんか知らんけど、俺の反応を、部屋の隅っこで、みんながチラチラ見て笑ってて。
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その一番奥で、陸さんが悪そうに笑ってる。
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「みんなにバラしたん、絶対あの人やん…」
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まぁ、いつかは…って思ってたから、いいけど。
茜さん、何て言うかなぁ。
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「無理無理無理!!ないない!!」
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全力拒否。
まぁ、そう言うわな…そうやろと思った。
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「とりあえずな、金曜に陸さんと北人。
二人なら、ほら会った事あるし…な? 何か、やきとりのおいしいお店やって言うてたで?」
「えっ?やきとり?」
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「ふふ(笑)そこに、そんなテンションあがる?」
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うんうんって、目を大きく見開いて頷く。 
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もう、二人の思うつぼにハマってるとしか思えんけども。 
まぁ、理由は何でもええかって。
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いつかはちゃんとせなって、思ってたから。 
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「何着てけばいいかな?」

「仕事終わりやんな?そのままでえーよ」

「『ちょっとでも若くみえる』何か… 探さなきゃ」

「そんなん気にするんや?(笑)…俺の為?」

「はっ?違うし!違うもん。ほら、北人くんかっこいいし?陸くんは誰かさんより、大人だし」

「おいっ!浮気やからな、それ!」

「(笑)へー、そこはヤキモチやくんだ、ふーん」

『そうなんだ、ヤキモチか…』ってまんざらでもない顔する彼女の頬を両手で挟むと、「むー」って暴れ出す。
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「フラフラよそ見はしません!えーな?!」
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必死に頷く彼女にそっと触れた唇。
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不意打ちのキスに、空気が抜けるみたいにしゅーって大人しくなって、赤くなる顔。
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めっちゃオモロい(笑)…そんな彼女が愛しくて仕方ない。

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誰よりも俺の近くにいてくれる2人には一番に
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『大切な人です』
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ちゃんと紹介しておきたかった。

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…next
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