.
.
.
still…〜scene10〜
.
.
「送ってくれてありがとう。ここでいいよ」
.
.
『タクシーに乗って帰るから、大丈夫だよ』っていうのに、『いや、部屋の中に入るまで見届ける』って聞かなくて。
.
.
.

「家、ここ?」
.
「ん、ここの2階の角のとこ。ほら、あそこ」
.
「ん、わかった。じゃあ、部屋の前までついてく」
.
「だから…もう階段上がったら、すぐそこだし」
.
.

そう言う私の横をすって通り抜けて、階段をタンタンて上がってく。
.
.

『ほんと言い出したら聞かない…変わんない、そういうとこ』
.
.
.
.

「壱馬くん!」
.
.
.
彼の後を追ってくと私の部屋の前、「ここ?」って。
.
.
「ん、そう」
.

鞄から鍵を取り出しながら近づいてくと、「早く!」って。
.
.

「えっ?入れないよ?」
「えっ?」
.
「えっ?無理無理!!!」
.
「無理無理!!」
.
.
必死に首を振る私の目の前で、同じように首をぶんぶん振って。
.
「いや、ほんと。部屋の中ぐっちゃぐっちゃだし。すんごく狭いよ?壱馬くんちのお風呂位の大きさだよ?」
.
「(笑)あほか、俺どんな豪邸に住んどんよ」
.
「いや、それでもそれ位狭いの!とにかく今日は無理!絶対ダメ!
えー、ほらっ。じゃあ次!掃除したら!ね?」
.
「次っていつ?」
.
「えっ?次?えーっと、次の日曜日!」
.
「(笑)、よっしゃ」
わかり易く目の前で、ガッツポーズ。
.
.
.
.
.
.
『あっ…今のって…』

.
.

「約束したで?次は、部屋、入れてくれるんやな?」 そう笑う。
.
.
「壱馬くん?今日は、ひょっとしてそんなつもりじゃなかった?」
.
「当たり前やろ?『付き合う事になりました』で、送ってきて、そのまま乗り込んだりとか…さすがにせんわ」
.
「ハメたんだ…私の事」
.
「んー、まぁ、キレイにハマってくれたなって感じやな、茜さんらしい(笑)
次の日曜な?楽しみにしとく」
.
10歳の男の子みたいな顔して、笑うその顔。 かわいいけど、何かムカつく。
.
.
無言でドアを開けて、思いっきり閉めようとすると…バンってそのドアが握られて。
.
.
.
「怒ったん?」
.
「…」
.
「無言の圧力や(笑)」
.
「もう!離して!」
.
「ウソやって、ごめん。ごめんなさい」
.
そう言われたら、こんな事で怒った自分が子供みたいで…ってなって緩めた手。
.
.
.
ぐっとドアが開かれると、飛び込んで来た壱馬くんに、ギュッて抱きしめられて。
.
.
.

「ごめん。ふざけすぎた」
.
「ほんとだよ…」
.
「でもさ…もうちょい、わかってくれてもよくない?俺の気持ち…。ここまで何でついて来たかとか…」
.
「ん?」
.
.
.
.
.

「何でわからんの?
もうちょっと一緒におりたいからやんか…」
.
.

ぎゅーって背中に回された腕に力が入ってく。
.
.
.
「次、会う約束が、欲しかったんやって…わからん?」
.
.
そこまで言われてやっと気がついた。
.
.
「ごめんっ、私ねっ…そんなっ」
.
.
ほんと、そんな事全然考えられなかった。 
そんな自分が情けないでしかない。
.
.

腕がゆっくり緩むと、壱馬くんと数センチの距離で目が合って。
.
.
.
『私だって、大好きなんだよ?』
…それをどうにかして伝えたかった。
.
.
.
.
彼の頬を両手で包んで、そっと触れた唇。
.
.
.
.
.
.
「大好きだよ…壱馬くん」
.
.
.
.
.
.
『空気を読んで』
『年上なんだから、彼の気持ちを考えて…』
.
.
.
私は、それは苦手なの。
うまく出来ない。
.
.
.
だから、『好き』だと思ったなら、『好き!』って言葉で、ストレートに全力で伝えたい。
.
.
.
「大好きなんや…ん、よかった。嬉しい、それ」
照れながら、ちょっと俯いて。
.
.
.
.

.
.

私は、彼が伸ばしてくれた手を握る事に決めた。 
.
.

…もう決めた。
.
.
.
.
.



…next
.
.
.
.

昨日急遽描いて差し込んだ、この10話。
ちょっと疲れてて、壱馬にこんなん言うてもらいたい願望詰め込みパッケージ🤭 ちょっと拗ねた感じがな、好きなんです(笑)何か自己満で、すみません。
himawanco
.
.