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Reverse~Last scene~
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肌に感じるぬくもり、規則正しい呼吸。
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その全てが心地よくて、うっすら瞼を開けると私を抱きしめたまま眠る彼がいて。
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そっと口づけた瞼。
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少し腫れてる…ゆっくり開いていくと、私がくっきり映った。
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「カズマ…?」
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「そや、約束したやろ?目が覚めてもそばにおるって」
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「ん」
.「コーヒー飲みたい。 淹れて?」
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ベットから起き上がろうとする私の右手をぎゅっと握ると、そのまま引かれて彼の腕の中。
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「ありがとう、紗良」そう呟いた。
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「ごちそうさん」
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コーヒーを飲んで、カタンってカップを置くと、ソファに座る私と視線を合わせた。
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「紗良? お前にな、朗報や」
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「えっ?」
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「俺な…もうええかなって」
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「ん?」
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「望んでた事は叶った。 ずっとな…お前のハンバーグが食べてみたかった。うまかったわ、ほんま。
…あったかかった」
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その言い方が、もう 『これが最後』 それを意味してるような気がして。
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「カズマ?」
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「…これで、お別れや」
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「えっ?」
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「こっち側も悪なかったわ、ほんま」
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「…っ」
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「そんな顔すんな。 大丈夫。俺の存在がなくなったら、お前の記憶からも俺はおらんようになるから。···キレイにおらんようになる。 おらんかった事になる。元の生活に戻るだけや。
罪悪感も、何も感じん」
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「そんなのっ、じゃあカズマはっ?」
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「ずっと影におったんや。そこに戻るだけ。悲しくも、さみしくもない」
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「私っ…」
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「アイツを選べ。 紗良が幸せになるには、アイツがそばにおる方がいい。そんなん俺でもわかる。
あいつと一緒にな、光の中を生きていけ」
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そっと近づくと、触れられた頬。
引き寄せられて、優しく重ねられた唇。
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「何で泣くねん、俺の事あんな嫌いやった癖に(笑)
紗良…お前が願えば、俺は消える」
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「イヤッ…そんなのっ…!そんなのできないっ!できないっ!!」
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止まらない涙を何度も拭ってくれて…その顔が優しくて。
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「お前には、幸せになる権利がある。 紗良、強く願え。あいつとの未来を。
… あいつだけを。ええな? できるな?」
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「やだっ! カズマっ!」
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「紗良っ!言うこと聞け!
幸せにな、なるんや。…わかるな?
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…壱馬を幸せにしてやってくれ、頼むわ」
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「っ…」
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『壱馬』って呼んだ…。
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『壱馬を幸せに』 それは、『カズマ』 の本心なんだと…。
疑いようがない位まっすぐに私に届いて、もう頷くしかなかった。
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「お別れや、紗良。…目、閉じて」
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冷たい手が私の瞼をそっと降ろして…その瞼に優しく唇が触れた。
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ぐっと目を閉じて…そして、強く強く願った。
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ゆっくり開けた瞳。
私の目の前に…。
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「…紗良さん」
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俺がお前で。
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お前が俺で。
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でも、光のお前がおらな、俺は存在せんかった。
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本物はお前や。
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ずっとそっち側を生きていけ、 紗良と一緒に。
光の中を。
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…俺はいつでもお前の隣に。
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Reverse
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...fin
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完結です。
ぶっ飛んだ設定でした(笑)
誰よりも壱馬の幸せを願う、カズマ。
これが私が一番描きたかったとこでした。
感想、よければ聞かせて下さい。
いくつかショートストーリーを上げて、壱馬&栞ストーリー後編に突入します。
いつも私のお話を読んでくれる人にたくさんの「ありがとうを」 himawanco
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