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Reverse~scene19~
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「そやったな…」
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そう耳元で囁かれると背中がぞくってする感覚。
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勢いよく、ベットに転がされて覆いかぶさる体。
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まっすぐに私を見つめる瞳。
瞬きさえさせてもらえなかった。
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「じゃあ、遠慮なく」
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ぐっと押し込まれたそれに、反射的に反る体。
押し広げられる感覚に息ができなくて。
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「ッ…」
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「もうちょい我慢や、 できるな?」
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その低い声が響くと、体の真ん中が熱くなっていく。
ゆっくりと揺さぶられ始める体。
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もう自分のモノじゃないみたいに熱を持ってく。
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「ァッ…ャッ、ゥン…」
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「紗良、 目開けてみ?」
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瞑ったままだった瞼を開けると、すぐそこにカズマがいて。
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生理的に流れてく涙にそっとキスをくれる。
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涙でかすんで見えるカズマの顔が少し歪んでて。
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「カズマ、気持ちいい?」
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「ん、余裕ないわ(笑)」
そう口元を緩めた。
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カズマ side
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彼女が俺の首に腕をぎゅって回して、体を回すと上下が入れ替わって。
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「紗良?」
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「…私がしたい」
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俺のおなかに手を置くと、ゆらゆらって動き始めて。
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僅かな光に浮かぶ彼女の体がほんまキレイで。
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柔らかい体のライン。
すーって背中をなぞると「ンァ…」 って漏れる声。
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「ンッ、ァッ…ヤッ」
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「紗良っ…」
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限界が近づいて、そこから逃れようとする彼女の腰を掴んで、2人一緒にもうただ一点へと駆け上がる。
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「ャッ、ンンッ…ァッ!ィヤッ!」
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「…ンッ、 紗良っ…」
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弧を描いた背中、ふわっと力の抜けた彼女の体をぎゅっと抱きしめたまま俺の胸元へと導く。
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繋がったままの体。
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「紗良…、少しだけ、このままでええか?」
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「……ん」
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「お前を感じてたい」
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トクトク早く繰り返すその鼓動を体全体で感じる。
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あったかくて、柔らかいその体。
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俺の体にぴたっと沿うようで。
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「カズマ…」
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そう呼ばれると、紗良が体を少し起こして俺の目の前。
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そっと重ねられる唇。
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震えてて… ポロポロ涙を零して。
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「あったかいっ、カズマはあったかいよ?」
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ぎゅって抱きしめると、『カズマっ…カズマ
』ってそう呼んで。
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耳元で呼ばれるその名前に、感じたことのない感情が溢れる。
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アイツにやったはずの、俺にはないはずの、 その感情。
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最後まで「好き」 も 「愛してる」 もお互い一回も言葉にはせんかった。
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その代わり、何度も何度も名前を呼んで。
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「紗良… (好きや)」
「紗良…( 愛してる)」
名前を呼んで、抱きしめる事で伝わればいいなんて、勝手に期待して。
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俺の背中に回されたあったかい腕。
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紗良もきっと…そうであって欲しい。
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一瞬、過った思い。
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もう、このままずっと…って。
ずっと紗良と…って。
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でも、俺は紗良のぬくもりを奪う存在でしかない…。
現実はそれや。わかってる。
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このままやと、ずっと離れられんようになりそうで。
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ぎゅっと抱きしめたまま、下から体を揺さぶると一層大きく背中が弧を描く。
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「ァ…ャッ!ンッ…カズマっ!」
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「紗良っ…」
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「もっ…ャッ…」
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「ンッ…ァッ…一緒にっ、紗良っ!」
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背中を突き抜けるような感覚に震えがとまらんくて。
そのまま2人でベットに沈んだ。
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「…ちょっと、寝るか?」
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「目が覚めても、 カズマは…いる?」
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「おるよ、 紗良のそばにおる」
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「ほんとに?」
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「ん、 やからちょっと寝よ。…このまま」
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遮るものが何もない、2人の体温が一番感じられる状態で、そのまま眠りに落ちてった。
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真っ白な空間に吸い込まれる感覚。
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『幸せ』って、きっとこういう瞬間を現す言葉。
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紗良を腕に抱いたら、止まらんくなった涙。
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涙が止まらなくなるのは、「辛い」「悲しい」 だけじゃないって。
…この瞬間初めて知った。
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…next is last scene
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