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Reverse~scene15~
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「おい!おい!!」
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何や?夢か?真っ暗な中、俺を呼ぶ声がして。
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うっすら目を開けると、寝室のドアに凭れる奴がおって。 一瞬で目が覚めた。
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「よっ、壱馬くん」
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俺を呼んでたソイツは俺の方を見て、右手を上げた。 グッと力の入る体。
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「そんな警戒すんなや…。
最後のな、挨拶に来たんや」
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「はっ…?」
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「そろそろな、もうこっち側も限界やなって。やっぱり俺には合わん。出たり入ったりな、 もうめんどいねんて」
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「それってどういう意味や?」
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ふーって大きく息を吸うと、俺に合わせた視線。こないだとは、違う瞳の温度。
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俺、知っとる、コイツを。
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「なぁ、お前さ。5歳の誕生日、覚えてるか?」
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「えっ…」
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その日は施設に入った日で、誕生日会をしてもらった、そんな記憶。
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「あの日から俺はお前の影になった。 光を歩いてくお前の影になった。 好きでこうなったんや、お前のせいでもなんでもない。 恨んだりもしてない」
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「ちょっ、待って。 意味わからん、何やそれ。それまでは?5歳までっ?」
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「知らんでええ。 知らんでも生きて来れたんや、これからもそれでええ。 
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あっ、一個だけ言うとくわな。
いつも一緒やったで、俺ら。 一人じゃなかった。
お前がおったから、寂しくも辛くもなかった。…ありがとな」
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「わからん! それじゃわからんやろが!」
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「知らんでええ事もあんねん。 つべこべ言うな。…色々悪かったな。急に現れたりして。
 影なら影らしくな… 居るべきやったよな」
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 口数の多くないはずのコイツがこんな風に喋るのが、不自然でしかなくて。
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「…色んなもん、見せてくれてありがとな」
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「えっ?」
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「影からやったけどな…ずっとお前を見てた。 嬉しいとか、楽しいとかは俺はわからんけど。でもお前がな、笑ろてるんは、悪い気はせんかった。 
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…俺も、救われる気がした」
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「何やそれっ」
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「今日お前を呼んだんはな…。 最後にな、 一個お願いあんねん、お前に。 
これが叶ったらな、俺はおらんようになる。 約束する。 
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今までのお前の記憶からも、 紗良の記憶からもおらんようになる。
 もう二度と現れたりせぇへん」 
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「そんなっ…」
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「やから、頼むわ」
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そう言うと、俺に近づいてきて、耳元でそっと囁いた。
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…next
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