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Reverse~scene14~
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「おいしそっ」
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目に入ったクレープ屋さんの看板。
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「あれ食べたい!」
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「はっ?」 
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「いこっ!」
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「ちょっ、 紗良 ! 」
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強引に手をひいて、並んだ行列。
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「ストロベリーカスタードと、んー、カズマは?」 
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「いや、俺は…」
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「じゃあ、ベーシックなやつにしよ。 チョコバナナ... いやっ、やっぱりこのプリンのやつにしよ! プリンスペシャルで!」
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「ベーシックは…(笑)」
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 「プリンおいしいよ?絶対!間違いないから、私のチョイス!」
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≪お待たせしました≫
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「ありがとうございます。はい、 カズマ。 あっ、半分こだからね」
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「わけわけやな」
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「えっ…」
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『わけわけやな』
それは、壱馬くんの口癖。
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「紗良 ?」
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「ん?あっ、ごめん。あっちで座って食べよ?」
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別な人。
壱馬くんとカズマは。
そう解ってるはずなのに重なる部分に空気が止まる。

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「ん、もうやるわ。 俺、もうええ。 甘すぎ」
半分以上残った状態で差し出されたクレープ。
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「美味しかった?」
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「ん、まあ」
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「ねぇ?美味しかったの?」
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「…んまかった」 
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「(笑) でしょ?じゃあ後は私が食べよ」
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「ブタになるぞ」
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「はっ?」
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「アイツに嫌われるぞ」
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「壱馬くんはそんな事で嫌いになんかならないもん!」
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「…やな。 あいつはそうやわな」

そう言うと座ってたブロックからぴょんて立ち上がった。
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カズマ side
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「そろそろアイツと…」 
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「えっ?」
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「俺は自分の意思で表に出られる。 戻る事もな。 アイツはそれができん。 それが俺らの決定的な違い」
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「それって…」
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「まぁ、俺がずっとお前の側にいる事もな…」
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「イヤッ!」
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バンって立ち上がると持ってたクレープ二個とも下に落としてしまって。
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 「…あーぁ、何しとんねん」
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「…っ」
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慌てて拾う彼女の瞳からポタポタ涙が落ちてく。
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「泣くなや、また買うたらええやん」
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 「…壱馬くん」
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小さく呟く背中に、手を伸ばす事はできなくて、掌をギュって握った。 
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『俺じゃないわな…そりゃ』
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 そっと瞳を閉じて、 そして静かにまたいつもの場所に戻るだけ。
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『呼んどるで』
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そうアイツに伝え残して。
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そろそろ潮時。
…もう十分やんな。
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…next
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