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Reverse~scene9~
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「慣れん場所はやっぱ疲れるやんな(笑)」
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「ほんとだよ…カーペットふかふかだったもん、緊張した…」
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「俺も口ん中カラカラ」
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「ふふっ(笑)」
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ジュエリーショップから帰って、適当にご飯を済ませて、「紗良さん、お風呂先にええよ」 って言われて向かったバスルーム。
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『絶対渡すから』
そう約束してくれたエンゲージリング。
思いだしただけで、ふふってなって…。
『キモイ…私』って顔を両手で覆ってお湯に顔をぽちゃんとつけた。
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バスルームのドアの向こう、ふと人の気配を感じて。
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「壱馬くん?どうかした?」
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そう声をかけると、バンって一気に開いたドア。
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「えっ?!」
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もう突然の事に何が起こってるのかなんか全くわからなくて。
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そこにいた壱馬くんは、壱馬くんじゃない。あの人だって、すぐにわかった。
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「脱がす手間、省けたわ」
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そう言うと、片手で持ち上げられた手首。 反対の手で顎を掴むとぐっと顔を寄せて。
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「今日はもう逃がさんで」 そう呟くとそのまま重ねた唇。
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「ンッ、ヤッ…んッァッ...」
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逃れようとするのに、力じゃどうやっても敵わなくて。
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力が入らなくなってくる指先。
シュッって音と同時に締めてたネクタイを引き抜いて、 私の手首に巻きつけた。
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「ヤァッ、やだっ…」
怖くて、自然に落ちてく涙。
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「フッ(笑) やからその顔、たまらんて言うたやろ?」
そっと舌で拭われる涙。
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「痛いんイヤやろ?大人ししとけな?」
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もう、逃げられない…。この冷たい瞳から。
ぐっと目を閉じた。
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「ええ子やな、紗良」
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そっと耳元でそう囁かれると、同時に右手が首筋からすーって降りてきて、胸の先端を掠 める。
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「ンッ…」
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「ええな、その声。 かわいい声で啼いてみ?」
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「イヤッ! あなたなんかにっ!」
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「そうか…まぁいつまで我慢できるかって話しやな」
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ギュッと指で摘ままれた瞬間、体に力が入る。
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「こうされる方が好きか?」
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そこに吸いついて、歯を立てられると痛みで強ばる体。
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「ンッ…ァッ…」
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空いた左手が太腿に触れて、段々と上がってくその手の感覚に震える。
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「よいしょ」
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私の右足を浴槽へと持ち上げると、「こうした方が、触りやすいやんな」
って、笑みを浮かべる。
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「…何で?…何でこんな事するの?」
止まった手。
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「興味あるからや…それだけ」
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「それだけ?···壱馬くんの事が嫌いだから?」
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「違うわっ!」
一瞬、目の奥の温度が変わった。
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「もうええわ。やる気なくした」
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手首のネクタイをすっと解くと、バンって消されたバスルームの明かり。
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「キャッ!」
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その暗きに咄嗟に踊ると、次の瞬間、目の前が急に明るくなって。
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「紗良さん!」
真っ青な顔した壱馬くんがそこにいて。
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「壱馬くん…」
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痛みが残る手で抱きつくと、体の力がすーって抜けていって…。
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「紗良さん!」
そう私の名前を呼ぶ声が遠くなっていった。
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…next
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