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Precious one~scene23~
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「どうぞ。すぐエアコンつけるから、待ってて」
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引っ越したばっかりって聞いてた通り、部屋の隅にはまだダンボールが積まれてて。 
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小さいテーブルとソファがある位の部屋。
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「ごめんね。 先週、 成績表作るの手伝ったり忙しかったから、全然片付け終わってなくて。
でも、ご飯はちゃんと午前中に作ってあるから、すぐに食べれるからね」
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「片付け、 俺も手伝おうか?家具とか買ったりするんやろ? 組み立てとか… 絶対苦手やろ?PCの設定とか…」
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「何?何で知ってるの(笑)」
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「なんとなく、そういうん苦手そう(笑) 俺、そういうん得意やから」
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冷蔵庫の中から色々出しながら「じゃあ、 その時はお願いしようかな」って。
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こんな俺でもなんか役にたてる事…やっぱ嬉しい。
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「これ、テーブル運んでくれる?」
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 「ん」
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カウンターに並んだ料理。

「これ、全部ひとりで作ったん?」 

「もちろん。料理ね、割と好きだから。 でも高校生男子がどれ位食べるとかわからなくて。好き嫌いも聞いてなかったし」
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 「えっ、普通に全部食うで。これ位やったら」
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「ほんと? 無理しなくていいよ?」
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小さいテーブルにめいいっぱい乗せられた料理。
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「「メリークリスマス」」
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オレンジジュースの入ったグラスを持ち上げた。
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「いただきます」
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「はいどうぞ」 
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「んまっ!」
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 「ほんと?大丈夫?」
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「めっちゃ旨い!」
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並べられた料理、ほんとどれも美味しくて。
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栞は「うまい、やばい!」 って言いながら食べる俺の隣で、ニコニコしてる。
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メシ食ってこんな風に嬉しそうにしてくれるなんて、そんな経験今までなかったな…。
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 「じゃーん」
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最後に出てきた小さいホールケーキ。
サンタとクリスマスツリーが飾られてた。
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「これも?」 
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「これも!昨日、だいぶがんばった!」 
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「やばっ、めっちゃ嬉しい。嬉しいわ、ほんま」
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「また語彙力なくなってるよ (笑)」
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「嬉しいとなくなるもんやろ?」
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「ふふっ(笑) そうなの?… コーヒー淹れるね」
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立ち上がろうとするのを引き寄せて、ギューってしたら、ふふって笑う。
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「苦しいです(笑)」
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「ちょっと我慢して」
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「死んじゃいそうです」
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「それは、あかんな(笑)」
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少し腕の力を緩めると、俺の腕の中から見上げるまん丸な瞳。
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「…栞?」
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「ん?」
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「めっちゃ好き。どうしよ…めっちゃ好きすぎてやばい」
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「ふふっ。私も。めっちゃ好きすぎてやばい」
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「ヘタクソやな、 関西弁」
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「えー、そう?(笑)」
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「せんせ?」
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「ん?何?急に(笑)はい、川村くん、どうぞ?(笑)」
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 「俺、来月18になるんよ。」
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「えっ?そうなの?」
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「うん、7日にな。お祝いしてよ。 あかん?」 そう言って、肩に頭をすり寄せると「甘えたさん出てる」って笑う彼女。
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だって、誕生日って好きな人に「おめでとう」って言うて欲しいもん。
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それ言うたら「子供っぽい」って言われそうで。 
やから、言うの勇気いったんやって。
面と向かっては言えんくて、肩越しやったけど。
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「いいよ。 7日は始業式だよね?もう学校始まってるか…。 じゃあ、6日!ちょっと早いけど、ね?」
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誕生日の約束を取り付けたあと、もう勢いで言うてまうかって。
思いきって…。
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「栞?あんな…?一緒に風呂入ろう?」
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…next
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