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valentine story~last scene~
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※昨日前半をpostしてます。そちらからお願いします。
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カンナがバックの中から取り出したクリアファイル。 
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「本当は明日のミーティングでみんなの前で発表予定だったんだけど、嬉しくて。黙って
られなかった(笑)」
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その中の紙を俺の前、すっと差し出した。
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「えっ…」
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「おめでとう、壱馬」
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『川村壱馬殿。 5年3月1日付けをもって第一営業部係長に任命する 』
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手渡された紙には 「辞令」の文字。
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「俺、 チーフになるん?」
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「そう、歴代最年少でチーフ。 臣よりも、私よりも早いんだよ。 すごい事だよ?」
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渡された紙に書かれた内容が信じられんくて、何回も読み直した。
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「マジ?えっ、俺…」
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「臣がね…『どうしても壱馬にチーフを』ってシンガポールに発つ前に、役員会で掛け合ったんだって。
そんなの一言も言ってなかったよね? 私も今日、常務に聞いてびっくりしたよ」
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「臣さんが…」
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期待してくれてるって、そういう事やんな。
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「色々お願いね、頼んだよ? 私もまだ部長になったばっかで、 壱馬のフォローまで出来ないからね?」
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俺の顔を覗き込んでふふって笑う。 
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「あっ、ん。がんばるわ」 
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「やばいなぁって思ってる?」
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「まぁ」
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「大丈夫よ、壱馬なら。絶対」
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そう言うと、精一杯背伸びした体が、跳ねるように俺に抱きついてきて。
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「ちょっ、カンナっ? 」
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「みんなの前じゃさ、どんだけ嬉しくても、こんな風にはできないからっ」
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こんな風に 『嬉しい』 を体全体で現してくれる事が今までなくて、とう対応していいかちょっと戸惑う位で。
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 でも、「壱馬、おめでとっ」ってはしゃぐその感じが、もうかわいいでしかなくて。
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「 乾杯しよっか?昇進祝い、ね?」
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冷蔵庫の中から取り出したビールをその場でプシュって開けると、「おめでとう」って持ち上げた。
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 雰囲気も何もないんかもしれんけど、 それが俺ららしくて。
 俺は、冷蔵庫を背にして飲むビールが何よりも好きやった。 
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ヒールを履いてない、 ちっちゃいカンナが俺を見上げるその瞳がめっちゃ好き。
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「じゃあ俺さ。席…カンナの隣?」
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「あっ、そうだね」
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「やばっ、怖っ」
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「これで遠慮なくダメだしできるよ、私も」
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「マジか…」
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視線を合わせるとふふって笑う。
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仕事中、こんな顔なんて見れるとは思わんけど、でも彼女の一番近くでこれから居られる。
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「なぁ、カンナ?それ飲んだらさ」
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「ん?」
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「盛大にお祝いして?」
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「えっ?」
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 「ほら、行くで」
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カンナの手から引き抜いた缶。
キッチンにそれを置いて、ひょいって持ち上げた体。
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「わっ、ちょっと壱馬!」
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「飲み終わるまで待てんわ、やっぱり」
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チュッと頬にキスをすると、 一気に赤くなる顔。
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「さすがに、明日遅刻ってわけにはいかんからさ。やから、ほどほどにな、しとく(笑)」
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「ほどほどね(笑)… お願いします」
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「俺…できるかな、ほどほど(笑)」
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「えっ!?」
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そっとベットに彼女を降ろしてゆっくり重ねた唇は、ラム酒の香りがした。
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…fin
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valentine story
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壱馬&カンナの another story でした。
本編にあった、七海ちゃんとカンナのカヌレの下り。ここで使いたくて(笑) 相変わらず、料理は苦手で… でも真剣なカンナのかわいさが伝わってますように。 そりゃ、壱馬もベタ惚れやっていうね(笑) 
そして、臣くんラストまでgoodjob!        
himawanco