「政府は意地悪なのか?」という問いの、その先へ
SNSでこんな投稿を見かけた。
中央値384万円で
結婚して、共働きして、子育てしろって?
日本政府って意地悪やな。
気持ちは分かる。
数字だけを見ると不安になるのは自然だ。
では実際、子どもを育てるのにいくら必要なのか。
子ども1人にかかるお金の現実
ざっくり言えば、
生活費(0〜18歳)
→ 約1,000万〜1,500万円教育費
→ 公立中心で約500万〜600万円
→ 国公立大学までで約1,000万円前後
→ 私立多めなら1,500万〜2,000万円超
つまり、
子ども1人あたり約2,000万〜3,000万円が目安。
もちろん、児童手当や高校無償化、医療費助成などの支援はある。
「全部自腹で3,000万円」ではない。
それでも、
- 住宅ローン
- 老後資金
- 社会保険料の増加
- 物価上昇
これらが同時進行する中で、
「これで全部やれって?」
と感じるのは無理もない。
「意地悪」という言葉は正しいのか?
正直に言えば、
感情としては分かりやすい。
でも分析としては浅い。
なぜか。
政府は“わざと”苦しめているのか?
子育て支援予算は増えている。
児童手当は拡充。
高校無償化も進んでいる。
少なくとも、
「子どもを減らしたい」
という政策ではない。
ではなぜ苦しいのか?
本質は「人口構造」にある。
- 高齢者が多い
- 現役世代が少ない
日本の社会保障は
「現役世代が高齢者を支える仕組み」。
つまり、
子どもを産める世代が、
すでに重い負担を背負っている。
これが構造。
時間差で詰んでいる
- 高齢化は急速に進んだ
- 少子化対策は後手
- 経済成長は鈍化
その結果、
子育て=経済的にも精神的にもハイリスク選択
になってしまった。
これは「意地悪」というより、
余裕が削られ続けた社会の帰結。
構造を変えるには何が必要か
少子化対策=給付金を配る
では足りない。
必要なのは、
現役世代の“詰まり”をほどくこと。
① 子育ての固定費を社会で引き受ける
単発給付より、毎月効く政策。
- 0〜2歳保育の受け皿拡大
- 公教育の底上げ(塾依存を減らす)
- 医療・出産費用の負担軽減
- 児童手当の安定的・長期的設計
狙いは、
子どもが1人増えるたびに家計が崩れる
という恐怖をなくすこと。
② 住居費の負担を下げる
実は一番効くのがここ。
- 子育て世帯の家賃補助
- 都市部の住宅供給増
- 中古住宅流通の活性化
住まいが詰まると、子どもは増えない。
③ 現役世代の手取りを守る
ここが核心。
- 106万・130万の壁の整理
- 社会保険料の伸び抑制
- 低〜中所得層の可処分所得増加策
子育て以前に、
現役が息できなければ出生率は上がらない。
④ 働き方の改革
- 男性育休の実効性
- 長時間労働是正
- 病児保育の充実
制度だけでは足りない。
現場が回らないと意味がない。
⑤ 社会保障の再設計
最も難しいが避けられない部分。
- 高齢者医療の適正化
- 介護の効率化
- 年金の予見可能性向上
「誰かを切る」ではなく、
持続可能なラインへ戻す。
⑥ 人口減前提で国家を作り直す
- 行政の統廃合
- デジタル化
- 生産性投資
- 計画的な外国人労働政策
延命ではなく、再設計。
では政府は実際どう動いているのか?
現実の政府の動きは、だいたいこうだ。
✔ 子育て支援の拡充
- 児童手当の拡大
- 出産一時金の増額
- 高校無償化拡大
✔ 労働力確保
- 高齢者の就労促進
- 女性就労の推進
- 外国人労働者受け入れ拡大
✔ 定年延長
- 70歳までの就労機会確保
✔ 少子化対策の予算増額
ただし問題は、
対策は増えているが、
構造全体を変えるスピードが足りない。
結論
日本は
子育てしたい人を止めてはいない。
でも、安心して挑戦できるほど余裕も作れていない。
これは悪意というより、
人口減少国家の苦しい運営。
「政府が意地悪」ではない。
でも、
「優しくもない社会」なのは確か。
そして最後に。
構造を変える鍵は、
- 子育て固定費の社会化
- 住居費と手取りの改善
- 社会保障の持続可能化
この3点セット。
感情で怒るのも自然。
でも本質は「悪意」ではなく「設計」。
ここを見誤ると、議論は空回りする。