フィリピンの外食王のはなし(2) | Global blog 〜世界の社窓から〜

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アジア、東南アジアに積極展開するインターネットカンパニー
アドウェイズの海外社員ブログです。

Jollibee Foods Corporation全体の2012年新規出店店舗数は223店舗にものぼるのですが、うち88店舗が海外で、海外展開に力を入れていることが分かります。この数字を初めて見た時、GDP成長率7%以上を誇り、急成長するフィリピン市場がありながら、海外に積極展開するなんて不思議な会社だなと思いました。特にジョリビーは先進国であるアメリカで20店舗以上も展開しており、金持ち華僑の道楽かと思ったほどです。難しい成熟市場で勝負するよりも、自分たちのホームである新興国の方がよっぽど難易度が低いからです。しかし、ただ単純に海外市場を狙っているわけでは無かったことを後で気づくことになります。


少し話はそれますが、私は英語の勉強で短期間フィリピンに滞在しており、何人かの教師に将来の夢についてよく質問しました。将来の夢を聞くのは私の趣味なのです(笑)。英語教師は全員女性です。一番多かったのが「海外で働く」という夢でした。どうやって海外に行って何をするのかまで考えているので、夢というか目標です。人気の国はオーストラリア、イギリス、アメリカなどの英語圏です。フィリピンでは、英語は現地のタガログ語とともに公用語に指定されており、英語を話せる人が非常に多いです。シンガポールやインドネシアのようななまりが少なく、ネイティブに非常に近い発音です。英語圏が人気な理由に新たな言語を学ばなくて良いというのがあると思います。

なぜ海外で働きたいのか?と聞いたところ、多かった回答は「新しい環境で働いてみたい」と「お金を稼ぐため」でした。確かに…、フィリピンの失業率は東南アジア主要国の中でも一番高い水準です。国内で職が無ければ海外へ行くことも選択肢の一つかもしれません。


各国失業率比較(世界経済のネタ帳から作成)

図4



フィリピンでは家族を大切にするから、みんな海外で働いてフィリピンにお金を送るのだそうです。そう言えば…フィリピンは出稼ぎ大国という記事を読んだことがありました。どれぐらい海外で稼いで来ているかと言うと、世界でもトップクラスなのです。2012年通年の海外労働者からの送金額は240億ドルと予測されており、同年の名目GDP(2,505億ドル)の9.6%に相当します。


2012年海外送金受取金額予測トップ10(単位:10億USD)

図3

※worldbankのデータより筆者作成


フィリピン人海外労働者数が10万人を超える国(2010年12月)図2
※Department of Foreign Affairs, Philippine Overseas Employment Administration, Commission on Filipinos Overseasより筆者作成




ここで、ジョリビーの話に戻ります。

ジョリビー(他のチェーンは含まず)の海外進出国を見てみましょう。2013年8月現在、アメリカ(26店舗)、ベトナム(33店舗)、ブルネイ(11店舗)、サウジアラビア(8店舗)、カタール(3店舗)、香港、クウェート、シンガポールは1店舗ずつと続きますが、フィリピン人労働者の多いアメリカ、中東、アジアに集中していることが分かります。


ジョリビー進出国別店舗数

図1

※ジョリビーホームページより筆者作成



なるほど、ジョリビーは海外戦略においても「A Haven of Happiness for the Filipino Family」「フィリピン人のために」が徹底されており、フィリピン人マーケットを狙った戦略がとられているのです(と私は思うのです!)。アメリカに出ていたのも、決して金持ちの道楽では無く、フィリピン人労働者が多いからだと考えられます。トニーさん、疑ってごめんなさい。

海外で働いた経験のあるフィリピン人の先生が教えてくれました。フィリピンを離れた2年間、辛いときに祖国を思いださせてくれたのはジョリビーだったと。ジョリビーはフィリピン人にとっておふくろの味に近いものがあるのです。実際、海外展開でよく重要視される味のカスタマイズですが、ジョリビーではほとんど行われていません。世界のどこで食べても同じ味なのです(イスラム教徒が多い国に関しては、豚肉への配慮などがなされています)。おかげで、店に並ぶ人はフィリピン人が多いそうです。


こうしてジョリビーはフィリピン人のおふくろの味、フィリピン人の誇りとなったのです。





おしまい