
説明できないものを、どう扱うか
の続きとなります。
臨床をしていると、
「骨盤」という言葉が持つ力の強さを感じる場面がよくあります。
大昔、整体院に勤めていた時です。
骨盤が歪んでいる。
骨盤を整える。
骨盤が原因。
この言葉が出ると
不安そうになる人もいれば、
「そこだったんですね」と腑に落ちた顔をする人もいました。
現在でも同じでしょう。
それくらい、「骨盤」という言葉は
身体の説明として、非常に分かりやすく、強い言葉です。
ただ、その分かりやすさが、
時々、現実を単純化しすぎてしまうこともあります。
骨盤は確かに重要な部位です。
上半身と下半身をつなぎ、
荷重や動作の中心にもなっている。
けれど同時に、
骨盤は「原因を一箇所に集約できてしまう言葉」でもあります。
本来なら、
・筋肉の緊張
・動作の癖
・呼吸の浅さ
・疲労の蓄積
・自律神経の状態
といった、複数の要素が絡み合って起きている不調が、
「骨盤が歪んでいるから」
という一言で、すべて説明できたような気持ちになってしまう。
臨床の現場では、
骨盤周囲を含めて施術することは普通にあります。
仙腸関節周囲、殿筋群、腰部、腹部。
それらを調整した結果、症状が変わることも珍しくありません。
ただそれは、
「骨盤の骨を正しい位置に戻した」
という話ではありません。
身体全体のバランスや使い方が変わった結果、
たまたま骨盤周囲の緊張も変わった、
というほうが実感に近い。
それでも、
患者さんがその変化を
「骨盤が整った感じがする」
と表現することは、よくあります。
これは間違いでも、勘違いでもありません。
専門的な話を知らなくても、
自分の身体の変化を言葉にしようとすると、
「骨盤」という言葉が一番しっくりくる。
それだけの話です。
問題は、
その言葉を、どこまで拡大解釈するか、です。
「骨盤が歪んでいるから不調が出る」
「だから矯正が必要」
「続けないと戻る」
こうした説明が加わると、
「骨盤」という言葉は、
理解のための言葉から、
不安を生む言葉に変わってしまいます。
言葉が強いぶん、
一度刷り込まれると、なかなか消えません。
実際には、
骨盤は左右非対称です。
左右差があっても、
問題なく生活している人のほうが圧倒的に多い。
それでも、
「歪んでいる」と言われると、
人は自分の身体を信じられなくなってしまう。
私は、
「骨盤」という言葉を使うこと自体が悪いとは思っていません。
ただ、
その言葉が持つ影響力を、
施術者側が軽く考えてはいけないとも思っています。
説明できないことを、
分かりやすい言葉で包むことは簡単です。
でも、
分かりやすさと引き換えに、
不安や依存を生んでしまうなら、
その言葉は使わないほうがいい。
身体は、
そんなに単純にはできていません。
一つの言葉で説明できるほど、
人の不調は分かりやすくありません。
だから私は、
「骨盤が原因です」と断定することはしません。
代わりに、
「今の身体は、こういう状態ですね」
と、分かる範囲だけを共有するようにしています。
分からないことは、分からないまま残す。
それは不親切ではなく、
身体に対する、ひとつの誠実さだと思っています。
────────────────────
ヒロ鍼灸マッサージ院
院長 國定 広丈
〒222-0023
横浜市港北区仲手原2-2-17
TEL:045-439-1689
【公式サイト】
https://www.hilo89.jp/
ご予約・お問い合わせはこちらからどうぞ。
【ネット予約(24時間受付)】
https://www.shinq-compass.jp/salon/reserve/438
【LINE(ご相談・ご予約)】
https://lin.ee/oS55b09