顔面多発外傷に対する美容外科の役割
今回は顔面多発外傷後の顔面の変形に対して、
私が行った美容外科治療について解説します。
実際の治療は1年半にわたって行っています。
患者様は2008年、当時34歳の時に、
北海道で仕事中に5階相当のビルから落下し、
両側前頭葉損傷、急性硬膜下血腫、前頭蓋底骨折、顔面多発骨折を受傷、
その他にも両側肺挫傷、出血性ショックなど認めたようです。
*ここでは他院で行われた詳細な手術は省略します*
それらに対し近医で頭蓋底形成などを行い、
術後経過中にはMRSAにも感染し大変だったようですが、
一命を取り留めました。
私のクリニックを受診されたのは、2014年患者様が39歳の時です。
3DCT所見です。前頭部は広範囲にチタンメッシュで覆われています。
他院で頭蓋骨欠損、高次脳機能障害と診断されていました。
来院当時は、高次脳機能障害の影響か意思疎通は困難で、
クリニックでは暴れもしましたが、
私をふくめスタッフと本人の母親の協力もあり、
ゆっくり信頼関係を築いていけました。
それでは症例を供覧します。
上記症状を認めます。
眼瞼下垂は外傷によるものと考えます。
また正面からのviewではわかりにくいと思いますが、
下からのviewとCT画像で確認すると、左顔面の陥没が目立ちます。
治療ですが、本来は眼窩・頬骨の骨切りを行いたいところでしたが、
高次脳機能障害や頭蓋底のこと、何より母親がリスクを伴うことは反対され、
せめて顔を綺麗にして欲しいということでしたので、
美容外科的に顔面の形態を整えていき、
さらに若返りも同時に行うことにしました。
とにかく少しでも前向きになってもらおうと、1年以上かけて手術を行いました。
まず右目の挙筋腱膜前転術と下眼瞼除皺術を行いました。
比較的損傷が軽度であった右顔面、特に眼瞼の治療を先に行い、
それにあわせ左眼瞼の治療を2回にわけて行いました。
特に左の眼瞼は頬骨・眼窩陥没もあり、
土台が不安定であり非常に難しい手術になりました。
まず下眼瞼を安定させるために耳介軟骨を用いて再建しました。
耳介軟骨は眼輪筋の下に移植し支持組織としました。
そして約1年あけて、
挙筋腱膜前転術とtransposition flapを併用し眉毛を挙上しました。
それでは最後にbefore & afterを確認します。
まだ左右対称とはいえませんが、整容的によくなりました。
私的にはあと少し左眼瞼の修正と、
何より頬骨の再建を行いたいところです。
私は二重や鼻の手術といった一般的な美容外科だけでなく、
決して元通りにはなりませんが、
顔面多発外傷後の顔面変形に対して、
少しでも整容的によくしようと、
日々メスをふるっています。
丸山成一
※before &afterの画像についてのご注意
写真はあくまで参考画像であり、症例により効果や満足度は異なりますのでご了承下さい。
※リスク・副作用・合併症
内出血、腫脹、左右差、後戻り、浅い重瞼線、深い重瞼線、不整な重瞼線、瘢痕形成(傷跡が残る可能性があります)、自分が想像していた結果と異なるなどが考えられます。
内出血、腫脹、左右差、下眼瞼外反、下眼瞼陥凹、流涙(涙が流れない)、瘢痕形成(傷跡が残る可能性があります)、目尻側にドッグイヤー(傷跡の端が盛り上がる)、自分が想像していた結果と異なるなどが考えられます。
また軟骨採取部は耳介後面の傷、耳介の感覚鈍磨、疼痛、外耳道の変形などが考えられます。