コレクティブ・エフィカシー(集合的効力感) | 原田信之(名古屋市立大学、元岐阜大学)

原田信之(名古屋市立大学、元岐阜大学)

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 自己効力感(セルフ・エフィカシー)を育むことの重要性は、すでに随分前から論を俟つまでもなく認識されている。しかし、協働的な学びを通して育む「コレクティブ・エフィカシー(集合的効力感)」の方はどうだろうか?これについては、子ども集団が有するコレクティブ・エフィカシーを育むことも重要であるが、その子どもたちの学習環境としての教師集団において、コレクティブ・エフィカシーをどのくらい装備しているか、学校組織のクオリティが問われるところでもある。

 

 ジョン・ハッティ(John Hattie)らは、『スクールリーダーのための教育効果を高めるマインドフレーム:可視化された学校づくりの10の秘訣』(北大路書房、2022年)において、教師集団に兼ね備えてほしいコレクティブ・エフィカシーについて、以下のように述べている(128-130頁)。

 

 「グループの力と、チームの相互作用の一翼を担う対話の有効性は、教師のコレクティブ・エフィカシーの効果量で示され、それは1・39である(Hattie, 2019)。ジェニー・ドノフー(Jenni Donohoo)が論じたように、教師のコレクティブ・エフィカシーは複雑な概念であるが、学習への影響を考えると、育成する価値がある。この考えには2つの主要部があると私たちは考える。まず、生徒が学ぶ必要があることを決定するためのシステムがあり、その学習を確かにする具体的な計画があり、生徒が期待どおりに学習しない場合には、教師グループが修正しながらその効果を測定するとき、その効果が発揮されることである。次に、この教師グループは、生徒が学習できること、教師グループが生徒の学びを保証する力(スキル、知識、信念)があることを信じていることである。・・・教師グループが成功と達成を経験すると、その成功が外部の力ではなく、自分たちの行動によるものと考えるようになる。・・・

 学習する際に、チームのメンバーは、私たちが健全な実践と呼ぶものに取り組む。彼らは考えたことを試し、実地で確かめようとする。彼らは失敗し、その過ちから学ぼうとする。この段階では、リーダーは教師に耳を傾け、対話をしており、たんに教師を観察して批判的なフィードバックを与えるのではない。教師には、他者の目にわずらわされることなく、新しいやり方を試す機会が与えられる。
 当然、これは実践を活発にすることにつながるであろう。ここでも、対話が重要である。コレクティブ・エフィカシーが強いグループはたんに同僚の方略を反復するのではなく、むしろ、同僚が使っているアプローチの微妙な意味合いについて理解を深める。この段階では、指導が生徒の学習に与える影響に留意しながら、教師が互いを観察することで学習するという代理経験を引き起こす。代理経験は、コレクティブ・エフィカシーの構築を可能にするもう一つの方法である(Bandura,1986)。こうした健全な実践で同僚と学ぶことは、彼らがその目標を達成できるというチームの確固たる信念を構築する。」

 

 

『スクールリーダーのための教育効果を高めるマインドフレーム:可視化された学校づくりの10の秘訣』(北大路書房、2022年)

 

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