「犯罪収益移転防止法」と「本人確認」について | 司法書士法人 小屋松事務所 スタッフブログ「転ばぬ先の杖」

「犯罪収益移転防止法」と「本人確認」について

令和6年4月1日、犯罪収益移転防止法が改正され、司法書士に求められる職責上の本人確認が厳格化しました。

そこで今回は、司法書士の職務である「本人確認」と今回改正となった「犯罪収益移転防止法」について解説します。

  「本人確認」とは?

本人確認とは「なりすまし」を防ぐために行うものです。

本人確認をする根拠の法律は複数ありますが、その中でも今回改正のあった犯罪収益移転防止法とは、正式名称を「犯罪による収益の移転防止に関する法律」といいます。

犯罪収益移転防止法とは、簡潔に述べると、テロリストのマネーロンダリングを防ぐための法律です。

アメリカ同時多発テロ(2001年9月)以降の国際的な潮流に従い、幾度も改正を重ねてきました。

 

マネーロンダリング対策における政府間機関であるFATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)の審査の結果、我が国は厳しい指摘を受けており、その結果を踏まえて、今回の本人確認の厳格化となりました。

 

  改正前と改正後の「本人確認」

これまで、司法書士は個人でのお取引の場合は「氏名、住所、生年月日、財産の価格」、法人の場合は「名称、本店又は主たる事務所の所在地、財産の価格」を確認ししていました。

 

今回の犯罪収益移転防止法の改正により、自然人は追加で「職業、取引を行う目的」、法人も更に「事業内容、実質的支配者の本人確認」を求めることとなります。

 

そのなかでも、大きな変更点は「法人」の「実質的支配者の本人確認」まで要求されている点です。

皆様も法務局や銀行などで、「実質的支配者」という言葉が目に触れる機会が増えているのではないでしょうか。

  「実質的支配者」とは?

「実質的支配者」とは何でしょうか?

実質的支配者とは、法人を実質的に支配することが可能となる関係にある人をいい、「犯罪収益移転防止法」上では「法人の議決権の総数の4分の1を超える議決権を直接又は間接に有していると認められる自然人等」と定義しています。

 

会社の形態として代表的な株式会社は、株主が出資した金額に応じて株式=議決権を有しており、株主総会は多数決で決議をします。

 

決議する議案に応じて可決するための賛成数は違いますが、賛成過半数(1/2以上)が原則的な決議であり、1株1議決権が原則ですから、議決権を多く有する株主の意思が通りやすい仕組みになっています。

 

株主総会では一定以上の議決権を有する人がその会社を実質的に意思決定できる立場にあるため、「実質的支配者」といいます。

 

出資した額に応じて議決権の数が決まる法人を「資本多数決法人」といい、株式会社、有限会社、投資法人、特定目的会社などがあたります。

 

出資した金額に関わらず議決権の数が決まる法人を「資本多数決法人以外の法人」といい、合名会社、合資会社、合同会社、一般社団法人、学校法人、社会福祉法人、医療法人、共同組合などが含まれます。

 

法人の形態により、実質的支配者にあたる自然人が誰にあたるのかは異なります。

 

ところで、実質的支配者は「人」であることが原則ではあるものの、法人の実質的支配者が上場会社である場合は、上場会社を「人」とみなして、上場会社まで本人確認を行う必要があります。

 

複雑な判定基準をもとに誰が実質的支配者にあたるのかを判断する必要があります。

 

  安心、安全、円滑な取引のために今後ともご理解・ご協力をお願いします!

法律の改正や新たな制度が施行されるのに伴い、皆様にご提出いただく資料やご協力いただく手間などをおかけすることになりますが、スムーズな手続きを心掛けてご案内いたしますので、今後ともご理解・ご協力のほど、どうぞ宜しくお願い致します。

 

ご不明な点がございましたら、司法書士法人小屋松事務所までお問い合わせください。