火葬場の1日の稼働数には決まりがあります。従って亡くなる方が多いと当然順番待ちになります。日本では年末年始と夏の暑い時期はどうしても火葬場の空き待ちに1週間から10日ほど待たされるケースも多々あります。ご遺族にとっては長い時間ですよね。時間があるからといってこの間に先に諸々の役所手続きを、という訳にもいきません。なぜなら火葬許可証がまだ受理されていないからです。除籍されなければ手続きできませんのでご火葬が終わるまではひたすら待つしかないのです。お客様によっては忌引き期間を過ぎてしまうので一旦会社に出社するケースも見受けられます。葬儀社では大型の保冷庫でご遺体が傷まないようにお預かりするのですがご依頼が次々入ると定員オーバーでお断りせざるを得ない場合も出てきます。不幸があって病院から葬儀社に電話したら何件も断られてやっとの思いで引き受け先を見つけた、そんな経験のある方もいるのではないでしょうか。今の葬儀社はどこもたいてい友の会や事前会員を募集しています。これに入会する最大のメリットは搬送を断られない事です。どんなに混んでいても会員を断ったらメンツが立ちません。事前にプランの見積もりなども出してくれるので費用の目安もたちます。もしもの時が近いのならこうした会員になっておくのもいざと言う時にたらい回しにされない方法かもしれませんね。
昨今の高齢化社会によってここ数年葬儀の形態はガラっと変わりました。ほんの10年くらい前まではその土地の地主なり町内会長なりが亡くなれば自宅やお寺に盛大に花輪が飾られ、その個数がその人のなりを表すかの様に飾られたものです。現在では家族葬が当たり前。1日で済ませる1日葬や葬儀自体を行わず火葬場に直行するケースも多々あります。理由のひとつは日本人の寿命が急速に伸びた事。80代90代で亡くなればその子供も60代から70代。最後まで自宅にいればまだしも病院やホームに長く入っていれば近所付き合いすらもうありません。葬儀を行ったところで身内以外に焼香に来る人などいないのです。
さらにコロナが拍車をかけました。人が集まる場所に高齢者が出かけるのは命がけに。勢い葬儀の形態はひっそりと小さくなるばかり。そしてとどめは寺離れです。『お墓を継ぐのは長男』と言い続けてきた寺は当時は次男、三男には隣に新しく墓を建ててもらう理由としてそう言い聞かせてきた訳ですが、まさかこれほど長く日本の景気が停滞し檀家にならずに墓を建てられる霊園やそもそも墓など不要の散骨などに取って代わられるとは夢にも思わなかった事でしょう。今や葬儀の際に寺を呼ぶのは全体の半分ほど。戒名をつけるのはさらにその半分です。寺にとってはお布施の収入は減るばかり。そこへ墓終いが拍車をかけます。今年は開祖750年を迎えた宗派もありますが寺にとっては将来に向けてその寺を維持できるのか正念場でもあるのです。
次回はもう少し掘り下げてお話ししましょう。