書いてみたいお年頃 -6ページ目

書いてみたいお年頃

小説を書いてみたいと憧れる大学生の日記

 これ以上何を教えればいいのだろうか。彼女には何もかも教えた。数学、科学、歴史、文学…これ以上は教えられない。何が彼女を駆り立てるのか分からない。私には理解できない。


 私はしがない家庭教師だ。もともと科学の素養はあったから、隣家の娘さんの勉強をみてやることを買って出た。なかなかいい近所付き合いはしてきたし、これからも続けようと思ったからだ。私達には子供はいなかったのも理由の一つだろう。


 彼女は勉強し、めきめきと成長していった。脳細胞が活性化されて、その大きくなる音がきこえるようだった。私の教える言葉の一つ一つが、夕飯の前のスナック菓子のように魅力的に映っていたんだろう。私はそれを与え、彼女は片っ端からむしゃぶりつくように飲み込んでいった。


 ある日、彼女の前に立って倫理を教えていた。私にはさっぱりわからないのだが、本はまるで私に豊富な知識があるように誤魔化してくれる。彼女はソクラテスの考えに夢中のようだった。無知の知。知らないということを知れ。私はそう記憶していた。彼女は私に尋ねた。

「知らないということを知れというけど、知ってることはどうでもいいの?…私は知らないことが多いわ。商店街でどのパン屋さんが安くておいしいデニッシュを売ってるのか、なぜ脱走できる囚人がそのチャンスを捨てたのか……ママのことも、パパのことも。」


 彼女の母親は彼女がまだ幼かった頃に、強盗犯によって殺された。父親も重傷を負い、半身不随のまま病床に伏していた。彼女は学校に行くよりも近くのパブでウェイトレスをするしかなかったのだ。だから私が勉学を教えることになった。はかなくも美しい少女は、残酷な運命に負けず、力強く成長していったのだ。私はそんな彼女しか知らない。


 彼女が成人として認められる頃、父親は他界した。安らかに死んでいったと彼女は言った。その後、彼女は引っ越していった。ある町に住み込みの仕事を見つけたそうだ。そうして彼女は旅立っていった。


 それから何年経っただろうか。思い出に鍵がかかりそうな頃に彼女は現れた。そして私に質問した。「なぜ人は生きるのか」と。もちろん他の話もした。昔の思い出話や、つぶれてしまった向かいのパン屋の話なんかを。だが、その唐突な、哲学的な質問に私は困惑してしまったのを今でも思い出せる。その頃には彼女はすっかり変わってしまっていたのかもしれない。いや、変わっていたのだ。何かの変化なくして、人は生きられないだろう。



 その夜のパブでは仕事に疲れた男達が酒を片手に騒いでいた。男達の目的はもちろん酒だが、それ以外の理由もちゃんとある。このパブで働いているウェイトレスに夢中なのだ。男達は目をらんらんと輝かせて彼女を待つ。だがその目の輝きは、ものの数分でいつものくすみに変わる。毎日一人だけおしゃべりができる、というのが男達の中でも暗黙のルールだったのだ。仕事の邪魔はできない。…だが実際は、彼女に話しかけても彼女の話について行けなくて話しかけにくい、というのが男達の本心でもあり、悔しく、悲しいところだった。今日の挑戦者はひどく老いた老人だった。話しをうんうんと肯いて聞いている。彼女の言葉は滝のように流れ出している。




 私はいろんな人にいろんな質問をしたの。だって話さないと本当の事なんて分からないでしょう?本に頼って知識を鵜呑みにするだけじゃ駄目なのよ。「対話」しないと。でもだれも知らなかった。常識を言うだけでみんな何も知らないのよ。知らないことを知ってるって言ってるだけだった。本当は知らないのに。ねぇ、「なんで人を殺しちゃいけないと思う?」


 でも知ってることもあったわ。居場所はすぐに分かったの。


 雨が降る中、私は目的の家を探していたの。小汚いところに住んでいると聞いてすぐに分かったわ。この町では汚い家なんてそうそうないもの。私は殺そうと思ってたの。でもそんなこと簡単にはできない。躊躇しながら道を歩いているときに昔の事を思い出したわ。隣に住んでいた優しい先生のことを。また先生に会いたくなったわ。でも、やめようと思ったの。私は私の信じる善い行いをしなくちゃって、そう思ったから。


 その夜のことはあんまり覚えてないの。何かをしたのかもしれないし、してないかもしれない。雨がやんでとてもきれいな空だったのははっきりと覚えているわ。雨に濡れたリンゴのあの赤々しさも。ねぇあなたはどう思う?私は殺したのかしら?それとも法律を守る善い市民の一員としてクソみたいな男でも野放しにしたのかしら?


 老人は話を聞き、酒を空にして去って行った。他の男達はさっきの老人はノーカウントだとでもいいたげにまだチャンスを探っている。彼女はあれこれと考えてみた。何もわからない。何も。そう、生きる意味なんて。

彼女は片付けを済ましてビールを注ぎに仕事へと戻った。

ようやくパソコンが復旧しました!!ですが残念なおしらせが…


今現在とても忙しく、これから毎日更新するのは無理そうです。。


なのでこれからは、2,3日に一回更新を目標に頑張っていきます。


これからもよろしくお願いします。


では一応書いていたのをあげていきます。


楽しんでもらえたら幸いです。


では。

 大きく息を吸い込んだ。校歌の歌詞は途切れ途切れだけど歌うのは好きだ。私は、行事ごとはなんでも頑張らないと気が済まないタチなのだ。




 今日は高校2年の終わりの終了式。来年度からは私も高校3年生。壇上には最後の表彰式が行われ、退職なさる先生が挨拶していた。私は体育館の窓を見ながらぼーっとしていた。最上級生になるとスカートが少し短めでも怒られないし、リボンもかわいいのに変えることができる。3年生になったら先生からの指導も少しゆるくなると専らの噂だし、なんだか3年生になるのも捨てたもんじゃないな、と思った。




 でもそんな考えも昼には吹っ飛んでしまった。放課後に公園のあのベンチで待ってるので来てください、と机の中から出てきた手紙には書いてあった。こんな経験が豊富でもない私は慌てて机に手紙を押し込んだ。周りの子たちにばれてはいないけれど、顔に血が上っていくのがわかる。あー、どうしよう。




 どこの高校にもあると思う。カップルがよくたまる場所だったり、そこで告白すると絶対成功すると言われる場所。公園のあのベンチ、とはそういった類の場所だ。学校では有名すぎて誰もが知っている。そこに呼び出されるというのは、きっと告白されるのだろう。冷静になってこう考えられるようになったのは、担任の先生の長い話が終わる頃になってからだった。成績表や春休みの注意なんて右耳から左耳へ通り過ぎていった。




 終了のベルが鳴る。とりあえず部活にいかないと。吹奏楽部の打ち合わせがすぐに始まってしまう時間だった。いつもなら同じ部活の友達と、先生の話が長すぎると愚痴をいいながら音楽室に行くのだけれど、もたもたしてるうちにクラスに取り残されてしまった。男の子達が寄せ書きのような物を書いていた。私にも書いて、とは言ってくれなかった。




 部活も上の空だった。これじゃだめだと思いつつも何回もリズムを崩し、同じパートの子に迷惑をかけてしまった。きっとこれじゃ何かあったってことはばればれだろうな。帰る時間になって既に外がうっすらと暗くなってきていることに気付いた。彼は待っているんだろうか。今日は寒くなるって天気予報でいってたな。




 私は校門をでて、公園に向かった。ベンチで座っている人影が見える。鼻いっぱいに空気を吸い込む。潮の匂いがした。


 私は彼に後ろから声をかける。決して驚かせたかったからじゃない。私なりに親しみを込めて言った。