電話の音がする。初期設定のままの着信がりんりんりんりん鳴り続けている。頭が痛い。俺は今日何していたのか…思い出そうとしても思いだせない。車のブレーキ音がする。とても大きい。交通事故でもあったのだろうか。
電話に出ようとしたら電話が切れた。画面を見ると非通知だ。いったい誰が電話をかけてきたんだろう。とても大事な用件のような気がする。今日は何か大事な用事があったんじゃないか、そんな気がしてならない。
水を飲みたい衝動に駆られた。ひどく喉が渇いている。布団から抜け出してキッチンに歩き出す。
キッチンには汚い食器が無造作に積み上げられている。なんで洗ってないんだ、といらいらした。
シャワーを浴びに浴室に向かう。服を脱ぐ。洗濯機に放り込む。洗濯しようとしたのにスイッチを間違えてしまった。電源がオフになった。面倒だったのでそのままシャワーを浴びることにした。
シャワーを浴びて置いてあったタオルで頭をふく。ごしごしごしごし。
「あっ」
浴室と脱衣所のあいだにあるちょっとした段差に足をひっかけてしまった。とても痛い。小指をぶつける事なんて久しぶりだった。
何か違和感を感じた。こんなところに段差なんかあったっけ。まぁいいか。
ソファに腰掛ける。少し頭痛も引いたようだ。こんな静かな夜には音楽でも聴こうかと思ったが、テレビのスイッチを押した。ニュースなんて最近見ていないから、何のことについて報道されているのかわからない。たまには新聞くらい読まないとな。
それにしてもどれくらい眠っていたのだろう。もう夜だ。今何時くらいなんだろう。服を着替えるためにクローゼットに向かう。クローゼットの中には物がたくさん積み上げられている。昔バーベキューで使ったクーラーボックスが置いてある。少し汚れている。なんで洗わなかったんだろう、といらいらした。
部屋が蒸し暑いのでベランダにでてみる。マンションの6階はやはり風が強いが、ひんやりと気持ちいい。下をみるとやはり事故があったようだ。そんなにひどくはないがヘッドライトの破片が痛々しい。こんなせまい道路で正面衝突にならなかったのがせめてもの救いだな、と想像した。
腹が減ったが冷蔵庫には何もないのでコンビニに行くことにした。玄関で靴を履く。お気に入りのスニーカーはどろどろだったので新品のサンダルで外に出た。エレベーターで下に降りる。夜のエレベータは少し気味が悪い。昨日雨が降ったのかは忘れてしまったがエレベータの床はどろどろだった。
コンビニに行くにはさっき見た交通事故の現場の近くを通らなければならない。警官が騒がしそうに聞き込みをしている。交通事故なら現場検証だけしていればいいのに、と思いながら避けるようにして横を通り過ぎた。
コンビニでコーヒーと肉まんを買った。マンションに帰り着くと何やら真上の部屋が騒がしい。こんな時間に何してるんだ、と思った。いつも騒がしいのは真下の馬鹿みたいに騒ぐ大学生なのに。特に音楽がいらいらする。こっちは静かにジャズを聴いていたいのに。いつもアホみたいにわけが分からない音楽とはいえないような騒音をまきちらしやがって。いつもそれで眠れないのに、今日は上かよ。いらいらした。
そろそろもう一眠りしよう。寝室に向かう。
上の階からビル・エヴァンスの枯葉が流れてきた。これでよく眠れそうだ。