一緒にげらげら笑いながら
僕はなぜか泣きたくてたまらなくなった

いじわるしない夏樹が
僕を心底不安にした

もうすぐ夏樹は壊れてしまう
僕だけにはわかった

学校で見せるしっかり顔の裏で
夏樹は少しずつ少しずつ削られて
あとひとかきでたおれてしまう砂の塔だった

一年生で引っ越して来た僕を毎日公園に誘ってくれた夏樹

誘われたら必ず遊んだ

土曜日も日曜日もこの公園でブランコした

Tシャツにジーンズの夏樹が
僕の師匠で
僕の自慢で

ザーッと耳をこする風の音
空を見て地面を見て
振り子のリズムに乗れるまで頑張ったら
空高く
地面に低く
もっと高く
急降下で低く


夏樹が笑うのをやめてぼくを見ていた

「かんちゃん、早く行きな」

(続く)
団地公園のブランコはもう静まっていた。
漕ぎ疲れた人影がブランコに座っているのがわかった。
「やっぱ夏樹かぁ」

夏樹が
片側のチェーンに頭をかしげて近づく僕をじっと見ていた

僕の五感がキュッと緊張した

夏樹の口は、死にそうな僕の魂にトドメを刺すひとことを用意している気がしてた。

僕は先手を打った
「テメー、人の徒競走でふざけた放送してんじゃね~ぞ!」

夏樹 だまる

「テメー、朝からブランコに本気だしてんじゃねーよ」

夏樹だまる

「テメー、ちょっと足が速いからって…」

「かんちゃん早く行きなよ!運動会遅れるよ!」

僕「へっ?」

「うち、行かないから」

僕「へっ?」

「先生に言っといて」

僕「へっ?」

夏樹、僕の顔見てげらげら笑い出す。
つられて訳もわからず僕も笑う
(続く)
団地の階段は、薄明るくヒンヤリとしている。
外から帰って来るときも、今みたいに出かける時も、ここを通り抜けると僕はすごく落ち着く。
何故かは説明できないけれど
僕はこの場所が好きなんだ。

スニーカーの底をわざとペタペタ言わせて階段を降りながら
一刻も早くここに戻ってこようと心に決めた。

ビリでゴールする事が今日の僕のお仕事です。
女子の言葉も、大人の視線や声援も受け入れましょう!
サッサとすまして「帰って来るね!」

最後の言葉は声になっていた

(続く)