この世界がゲームだと俺だけが知っている | I CANNOT FLY

I CANNOT FLY

彼の生きがいは文字を打ち、人に伝えること
そう、ただの自己満足
しかし、それこそが彼の存在意義
この電脳の海で、誰かとは必ず繋がっている

皆のすなみが小説に挑戦してみました
これまでの培ったブログの集大成です

それでは「この世界がゲームだと俺だけが知っている」

お楽しみください

 

暗い部屋の奥でうずくまる人影、そう俺だ・・・

俺の名は佐々木博昭

ギルドネームは相良操麻(さがらそうま)

どこかで見かける設定だが気にしないでくれ

大好きなAKBのテレビ特番に正座をして見入る毎日だ

バラエティ番組ではAKBの人気シングル曲の順位発表をやっていた

 

しかし、そんな俺にもチャンスが巡ってきたのだ
地下アイドルの冨田真由のライブで知り合った友達から
AKBのライブチケットを倍額で譲ってもらったのだ!

ひきこもりの雑記帳を胸ポケットにしまい、いざライブ会場へ

 

ライブの開演前、会場に佇んでいると、俺はふと視線を感じた
その気配の先を辿ってみると、ひとりの女の子と目が合った
お互い目をそらす
そのときは何も気にしていなかったが、また視線を感じる
どうやら、またあの子がこちらを見ているようだ
視線を感じて、チラリと見る
お互い目をそらす

 

・・・このやり取りを何回か繰り返したとき、
俺はひとつ思い出したことがある

あの女の子は、誰かに似ている

もしかして、あれは・・・

 

今から10年前の秋、俺がまだ大学生だったときのこと。

俺はアイドル声優、桃井はるこのライブから帰る途中だった。

ピンクのライブTシャツを着て、自転車にまたがり、
信号待ちをしているときだった

後ろから声をかけられた

「あれ、あなたもモモーイのライブに行った人ですか?」

振り返ると、同じピンクのTシャツを着た女の子が、自転車に乗っていた

「え、あ、あの、どうして」

「だって、そのTシャツを着ているから」

彼女は俺のライブTシャツを指差しながら、笑った。

それがあの子と俺の出会いだった

 

あのとき、あの交差点で、俺たちは長く話していた

モモーイのこと、好きなアニメのこと、そんな話を

それから、あの子が連絡先を教えてほしいと言って、

今日はもう遅いから、また今度お話しましょうということになった

 

後日、俺たちは何回か会った

あの子は、浪人生で、俺の通っている大学を

目指しているとのことだった

そしてなんと医学部だ

俺の通っている芸術学部なんかとは、全然、難易度が違う

 

あの子はよく、俺にモモイーイのCDを貸してほしいとか、

小麦ちゃんのDVDを貸してほしいと言った

たぶん、あれは俺と会うための口実だったんだろう


そんなあの子との付き合いであったが、

あるとき、連絡が取れなくなった

というのも、向こうから姿を消すとかそういうものではなく、

ただ単に俺が携帯電話を落とし連絡先がわからなくなったのである

それから全く、連絡は取っていない

あの子がどうなったのか、大学に合格できたのかもわからない


あの女の子は・・・あの子だ

そして先ほどから向こうも俺のほうを

チラチラ見ているのだから、きっと俺だと気がついている

話かけようかと思ったが、戸惑う

もし、違う人だったら?

そうだ。あれはもう10年前のことだ

変わっている

あのときとは

もし、違う人だったら?

勇気が出ない

声をかける勇気が

 

そんな思いを胸に留めながら、ライブは始まった

ライブの終わり、モモーイのあいさつを聞きながら、俺は考えていた

どうしよう

思い切って声をかけようか

「あの、人違いだったら申し訳ないんですけど、

昔桃井はる子さんのライブでお会いしませんでしたか?」

これでいいだろう

もし人違いだったとしても、謝ればよい

なにこいつキモイ、と思われて終わりだ

そんなふうに思われるのは、慣れてる

かけるんだ、声を

今いかなきゃ、ダメだ。ダメなんだ

そう思っているうち、ライブは終演した

 

あの子のほうを見ると、

すでにあの子は俺のほうを見ていて、顔を背ける

何をやっている、早く、行くんだ

行けよ俺

いいのか、これで

あの子は俺の前を横切った

そして、ドアの前でUターンし、また俺の前を横切る

もしかして、待っているんじゃないのか、俺を

俺が気づくのを。俺が見つけてくれるのを

だが、ここでは無理だ

会場から外へ出る人で混雑している

もう少し広い所へ…

 

俺はもっともらしい理由をつけて、あの子を見失わないように後を追った
結局、俺は声をかけることができなかった

違う人だったらどうしよう?

こちらをチラチラ見ていたのは、

なんか俺に見られていて気持ち悪いと思ったからでは?

だいたいこんな再会の仕方ねえだろ、ドラマじゃないんだから

そう、きっと人違いだ

それより早く駅に行かないと電車乗り遅れるぞ

 

俺は、自分から人に声をかけたり、

誰かを誘ったりするのが大の苦手だ

それは、俺なんかに声をかけられたら鬱陶しいだけだとか、

俺と話をするなんて嫌に決まってる、

俺に誘われたって迷惑なだけだ

そんな思いからだ

 

この日も、俺は声をかけることができなかった

もし、あの子だったら

これから、一緒にライブに行くことができたかもしれない

そういう友達ができたかもしれない

もし、人違いだったら

可能性は無いに等しいが、もしかしたら、友達になれたかもしれない

だって、向こうはひとりで来ていて、俺もひとりだから

 

ライブ前、みんなが楽しそうに仲間で集まってしゃべっているのに、

ひとりぼっちなのは、寂しいもんな

だから、友達になれたかもしれない

まぁ、それはないとしても、謝れば済むことだ


なのになぜ夢の中の俺のゲーム世界かよ

俺は声をかけられない

本当に情けない

心底自分が嫌になる

どうしようもない臆病ゴリラだ

 

この日、俺はわかってしまった

俺は、自分に自信がない

それがすべての元凶だと

自分に自信がないから、人とうまく接することができない

自分から声をかけることができない

俺なんかが、すみませんすみません

いつもこんなで・・・

 

さて、すなみの小説もここで一端終了です

これからまた仕事が忙しくなるから

ブログも、あまり長いの書く時間なくなるかも
なんかいつもこんなこと言って結局書いてるけどw
そこらへんは、よろしくね