「今一度、説明してあげよう」 | 消防設備士かく語りき

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川崎の消防設備士、平成め組代表のブログ

 

長過ぎたゴールデンウィークも終わり我が平成め組も本日から皆稼働。

 

私はタケと2人で4年ほど前から請け負っている埼玉方面の小・中規模の物件を数件回る内容。

1件目は自動車整備工場で普通にやれば2名で1時間もかからない案件。

いつもは消火器や誘導灯を担当している私だが、本日は何となく火報を担当。

 

すると、シャカシャカと感知器を炙る私の前に不意に現れたのが防爆型の熱感知器。

これまで火報は同行する人間に任せていたのでそもそも防爆型があることさえ知らなかった。

 

ところでこの防爆型の感知器、例えば今日の現場は私自身初めて火報を担当したので防爆型があることを「そもそも知らなかった」だけなのだが、しかしこの防爆型感知器が不思議なのは「もう何度も行ったことがある現場で内部の状況も勝手知ったるはずなのに突如姿を現す」というところ。

 

機器と総合で年2回点検していても3年目や4年目の点検時に「うわっ!? ここ防爆ついてんじゃん!」となることが多々ある。

「前任者からの情報伝達がなされていない」などといった格好のいい理由ではなく、単純に「誰一人として気付いていなかった」ということが多い。

 

「まさかこんな狭くて汚いところに感知器も無いだろう…」などと余裕をぶっこいて内部を覗き込むといきなり天井に付いてたりするから困ってしまう。

そして、「やっべ…! 防爆のヘッド持って来てねぇよ…!」となる。

 

感知器界でまるで「隠れキャラ」の様な立ち位置を確立しているのがこの防爆型感知器というやつなのだ。

実際外観も黒く、また付いてる部屋がやたらと暗い場合も多く、見逃しがちであるのは間違いない。

 

また新人が火報を担当していると実物を目の前にしても感知器と思わず「何かの機械かな…?」と誤解してしまうケースもあり得るだろう。

がしかし、我が平成め組はそんな「突然姿を現す防爆感知器成敗用」として普段使用する2台の軽バンにそれぞれ「防爆用試験機」を常備しているので問題ない。

 

しかも能美製の炙り棒にワンタッチで取り付けられるよう、あの鉄クズみたいな見た目で7000円もするアタッチメントを予め取り付けてある。

まさに「痒い所に手が届く」、我が平成め組の道具への拘りが垣間見えると言えるだろう。

 

この7000円のぼったくり鉄クズアタッチメントを予め付けてあるのが私の優しさ

 

 

ワンタッチで能美棒に装着出来るので点検も楽

 

因みに、現場に防爆型感知器があると事前に分かっている場合、わざわざ「お湯を作る用」のポットを持参する方がおられるが、ハッキリ言ってそんなもんは無駄の極み。

お湯なんざ現地の方に説明すれば100%頂ける。

というワケで、試験器だけ持って行けば十分である。

 

 

ところでその防爆型感知器。

休憩中、何気なくタケに「お前、防爆型の意味分かるか?」と言うと、タケ曰く「爆発しても大丈夫な様に…」とのこと。

 

これまた大きな誤解をしてしまっているが、確かにこれまで防爆の正しい意味を彼に説明したことは無かったかも知れない。

 

大分以前にも私はこのブログ上で「防爆型」の意味を説明させて頂いたが、消防設備業に従事している方でもこの「防爆型」の意味を誤解している方が本当に多い。

むしろ「間違って覚えている人の方が多い」くらいの印象である。

 

なので本日、そんな防爆の意味を誤解している方々の為に、もはや半分親心で私が直々にこの防爆型の意味を「誰でも必ず分かる様に」説明してあげようかと思う。

指を咥えながら涙流しつつ聞きなさい。

 

 

防爆型感知器は外観も確かにゴツく、見るからに「爆発に耐えられそう」に見えるし、実際普通の感知器よりも衝撃に強いのは確かである。

がしかし、本来の意味は全く異なる。

 

「防爆型」とは「それ自体が爆発のきっかけにならない」、つまり「爆発を防ぐ」という意味での防爆であり「爆発に耐えられる」という意味ではない。

 

もしも「爆発に耐えられる」のであれば名称も「耐爆型感知器」となるだろう。

そもそもアンタ、建物が爆発して骨組みだけになった状態で感知器だけ綺麗にそこに残っていても意味がないでしょう?

 

建物が爆発して吹っ飛んでるのに綺麗に残った感知器を見て「感知器は綺麗に残ってますね!」と感動してくれる建物オーナーなど地球上に存在しない。

通常の火災はもとより「爆発火災」などを未然に防ぐ為に火災感知器を付けているのだから「爆発した」その時点でもう終わりである。

 

防爆型感知器は「燃料倉庫」や「溶剤置き場」などの「部屋の中の物品が気化して可燃性のガスが充満している可能性がある場所」に設置される。

 

と言うのも、火災感知器も広い意味では「電化製品」であり、感知器内部で電気による「ごく微量の火花」が発生する可能性がある。

もしも可燃性の気化ガスなどが充満していた場合、その火花が点火源となって爆発する可能性がある。

 

なので防爆型感知器はもしも感知器内部で火花などが発生してもそれが絶対に外部の可燃性ガスに触れることがないように」本体周囲をガチガチに覆っている、ということである。

「普通の感知器の上から隙間の無い鎧をかぶせた状態」と解釈してよい。

 

ということはその部屋の中にあるその他の電化製品、誘導灯や照明器具はもちろん、その照明のスイッチに至るまで全て「防爆型」である。

なので照明のスイッチをあえて部屋の外側に設けている場合も多い。(その場合は防爆型でない普通のスイッチ)

 

もしも今後どこかで防爆型の感知器を見かけたら照明や誘導灯も見てみると良いだろう。(誘導灯が設置されているのは非常に稀だが)

 

こうした理由から防爆型感知器は「お湯で温めて発報させる」のであり、本来は防爆型感知器が設置された部屋に加熱試験機を持ち込むこと自体厳禁なのだ。

がしかし、防爆型があるとは知らずにそのまま加熱試験機を持ち込むことは多々ある。

 

でも消防設備点検の歴史上、防爆型感知器の付いた部屋にうっかり加熱試験機をそのまま持ち込み、その瞬間気化ガスが引火して爆死した作業員も数名程度はいるものと思われる。

 

常に図面を持ち歩いて点検していたのであれば図面の感知器シンボルに「Ex」とあるのでそれが防爆型と分かるが、しかし毎度現場で図面など持ち歩いてもいられない。

でも私の様なプロフェッショナルになると部屋の前に立った時に何となく分かる。

「この部屋、防爆クサいな…」と。

 

そんな時、私は部屋の前で衣服を全て脱ぎ最後はパンツも脱いで全裸のまま防爆用試験器だけ持って入るようにしている。

これがJIS規格の「№ / USO800」に定められた「防爆型感知器の正しい試験方法」なので明日から貴方もそうしなさい。

 

ね! 今日の記事は為になったでしょう?

私も3年半に1度くらいは「皆の為になる記事」を書くのである。

 

 

未経験者大歓迎!!