「IRATAへの挑戦 ~5日目、及び最終日~」 | 消防設備士かく語りき

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川崎の消防設備士、平成め組代表のブログ

 

昨日はとうとうブログを休んでしまった。

 

昨日はIRATAトレーニングの5日目。

本日が試験だったので事実上、最後のトレーニングの日であった。

がしかし、相変わらず私は覚えが悪く、皆に比べて進みが悪い。

 

少々言い訳がましいが、このIRATAトレーニング、開始前日からとにかく緊張してしまい初日は殆ど眠れないまま参加

だがそんな寝不足状態で初日を迎えた結果、初日からして少々遅れ気味となってしまい今度は緊張に加えて容赦ない不安感に苛まれる。

 

結局2日目、3日目、そして4日目と精々2時間程度の睡眠しかとれないままトレーニングを継続。

しかしそんな状態ではもはや殆ど頭も回らず、インストラクターの方がほんの2分前に見せてくれたはずの技の手順さえも覚えていられない。

 

そうした中で昨日、いよいよ緊張と不安がピークに達し、また心身共に疲れ果ててしまい帰宅後はとてもブログを書ける精神状態では無かった。

とは言えそれでも眠れず、昨晩はひたすら海外の「IRATA level1」の各テクニックの動画を見続け、その手順を散々頭の中に叩き込んだ。

 

 

「高所恐怖症です」などと言いつつもこの5日間でタケも急成長

 

初日からトレーニングの合間、度々自分のスマホで皆のトレーニング風景などを撮影していた私だが、しかし昨日だけは1枚も撮っていない。

不安と緊張は臨界点を超え、私の頭の中から「余裕」という言葉そのものを消し去っていたらしい。

 

とにかく今日の試験に備え、ひたすらイメージトレーニングを繰り返す。

そして本日。

 

 

そう、本日12日こそが今回のIRATAトレーニングの集大成、本試験日。

5日連続のトレーニングで皆の疲労もピークであるが、しかし本日の試験ではこの5日間で学んだことの全てを試される。

 

しかもIRATAの規定上、審査は「利害関係のない第三者の審査官」が評価をすることを求められ、その為本日ははるばるシンガポールからIRATA認定の審査官が来日。

 

現在日本人にはIRATA認定の試験官はおらず、毎回海外から来てもらう形となっている。

審査官は基本的に英語オンリーなのでベテランの女性通訳の方と共にトレーニング場まで来られた。

 

当初私は「5日間で学んできた技術の中から抜粋して試験される」などと思っていたが、そうではなく「5日間で学んできた技術の複合」という形で試技を行わねばならない。

なのでこの5日間学んできた技の全てを個々に評価される。

 

そうした中、昨晩もまともに寝れたのは2時間程。

「滅多に不合格者が出ない」というレベル1の試験だが、しかしそれは言い換えると「殆ど者は5日間のトレーニングで合格水準の技術を習得出来る」とも言える。

実際、多少の座学はあれど朝の8:30からスタートし、毎日夕方5時までみっちりとトレーニング。

 

 

 

私も死に物狂いで技の習得に励んだ

 

今回の受講生中、唯一私より年上の元消防士の方はさすがの安定感

 

ガラス清掃が本職のお二人はさすがに「ロープ慣れ」していた。

 

半ば無理やり「5日で合格水準まで押し上げる」みたいな形だが、それでも私は5日目の終了時点でインストラクターの方も半分私の不合格を意識し始めたのか、「落ちた際」についての言及もされたほど。

 

だが私自身は各テクニックの「手順」がいまいち理解出来ていなかっただけで、それら一つ一つの技術は皆より遅ればせながらも一応出来る。

「手順さえ頭に入ればきっとやれるはず」と己を信じ、散々イメージトレーニングを行った。

「明日で最後だ」と自身の心に言い聞かせるように。

 

そして迎えた本日。

通訳を介して審査官より試験についての20分程度の説明があった後、いざ試験へ。

試験官からそれぞれの受講生に「貴方はこれを」みたいな形で試技を要求され、各々それを見せていく。

 

私は1発目に「パスノット」と呼ばれる、中間部に結び目が設けられたロープを専用器具を使用しながら昇り、及び降下をするという技。

だがこれこそ昨晩動画視聴で特に入念にその手順を確認しておいた技。

 

それゆえ1発目の試技を無事に成功。

その後は「エイドクライミング」と呼ばれる2階レベルの高さの鉄骨の横移動するという試技を求められたが、これが数ある技の中でも特に体力を消耗する。

 

その後、比較的簡単な技を要求されるも、しかしそこで痛恨のミスを犯してしまい不安が脳裏を過る。

直後「ロープからロープへの移動、及びリアンカーの通過」という、個人的には「レベル1で一番難しいのでは?」と思われる技を要求される。

 

しかも練習では精々1.5m程度離れたロープへの移動であったが、本日の試験では隣の隣、3mほど離れたロープへの移動を求められ、移動距離が長いとその分高所まで上がる必要があるのでその分体力的にもきつくなるが「これさえ終わればもう終わりだ…!」と自分に言い聞かせながら試技を披露。

 

幸いこの最も大きな課題をほぼミスなしで終えることが出来、ようやく安堵。

結局全ての課題を一番最後に終えたのは私であったが、その最後の課題である「リギング作成」(実際の現場で使うロープの結び方)を終えたと同時に審査官より「congratulation!」との言葉を頂きこれにて試験終了と相成った。

 

9時から開始し、昼食抜きのぶっ通しで行われ、終了したのは午後2時。

必死になり過ぎて時間の経過など全く感じなかった。

というワケで今回のIRATAトレーニング、従業員のタケを含め5人全員無事に合格。

 

喜びよりも先ずはとにかく安堵感。

緊張と不安から解放され「今夜から普通に寝れる」と思うとようやく一息つける。

47年間生きてきてこの6日間は恐らく「人生で最も過酷な6日間」であった。

 

緊張と不安もさることながら、そもそも一つ一つの技術がとにかく難易度が高く、身体に動きを覚えさせるのは容易ではなかった。

 

当初「一週間仕事から離れられる」と喜んでいた私だが、しかし2日目の途中から「こんなに過酷なトレーニングなら仕事してた方が1億兆倍楽だったわ…」などと思わず心が悲鳴を上げ出す始末。

 

実際このIRATAトレーニング、もはやトレーニングと言うより内容的には「特殊部隊のロープ訓練」に近い。

 

3年毎の更新制で更新の際にも同じトレーニングを受けて合格する必要がある。

なので病気や怪我で身体を動かせなくなったり、あるいは太ってしまい課題をこなせなくなれば当然資格も失効という過酷さ。

 

維持していくだけでも難儀なライセンスであるが、しかしだからこそヨーロッパではロープ作業行うIRATAの技術者に高い評価と信頼が与えられている。

 

日本ではまだまだ認知度が低いIRATAであるが、今後はその知名度を上げ、近い将来は日本国内でもロープ作業の評価基準として見做されることになるのでは? と私は見ている。

 

本当にきつく、過酷な6日間。

今は身体中が痛い。

でもそれと引き換えにIRATAという大いなる「誇り」を我々は手に入れた。

 

 

未経験者歓迎!!