b計画 | h

h

h

リュックの中身、これで良いのだろうか。

要らない物ばかりで要る物が入っていないような。

考えても分からない。焦ってもいた。

もういい。このままで出かける。

…早く出過ぎた。

見たい映画があるのだけど時間が合わない。

時間を調べずに出て来ちゃったのだけど

真っ直ぐ行って丁度良い時間ではないと思う。

着いてから何時間も待つのは萎えるじゃないか。

その映画は上映してないってことも考えられる。

ちゃんと調べてから出て来ないや。

 

時間つぶし兼時代遅れ予防として

デパートやファッションビルの中を歩いて行こう。

服の売り場を通って最新のファッションを見よう。

この辺りのビルは全部どっかで繋がっている。

中を通って映画館まで到達できる。

まずはこのビルの二階まで階段で行こう。

階段でないとダメ。健康のためエスカレータは使わない。

 

二人の女性とカフェにいる。

食事が終わって会計しようというところ。

自分がまとめて現金で払うことにする。

レジで請求されたのは五千幾ら。

財布を開く。札を見る。

どうしよう。ウォンばかり。日本円どこ。

よく見たら日本円の札もあって、支払い完了。

そして自分は二人から金を回収。

が、釣りがなくて困る。

一人はちょっきり出してくれたんだと思う。

もう一人には釣りが必要だった。80円。

小銭は日本円ばかりジャラジャラあるのに

十円玉3枚と五十円玉1枚の組合せが作れない。

他の組合せでも良さそうだけど頭こんがらがる。

どうしても80円を作ることができない。

間が持たず、小銭ジャラジャラさせながら話しかける。

80円を渡す相手の女性。音にして四文字の苗字。

何て苗字だったか今は思い出せないけど

その時ははっきりと呼んだ。「××××さん」。

彼女は一瞬、戸惑うような反応を見せた。

だから名前を呼び間違えたのかと思った。よくやるんだ。

だが今回のはちょっと違ってイントネーションの問題だった。

自分の出身地ではこう呼ぶのだと弁解した。

 

ビルからビルへと歩いて移動する。

ガラス張りの渡り廊下みたいなところを通って行く。

それは通路なのか部屋なのか、両方っぽいな。

あれはフラワーアレンジメント教室だったのだろうか。

女性たちが集まって作品の写真を撮っていた。

通路いっぱい使ってる。あちこちに花が置かれてる。

強引に通り抜けるしかない。花を踏んだ。仕方ない。

 

低い大きなテーブル。それを囲む深いソファ。

庭のような温室のような。グランピングってやつ?

大人数のグループで来ているようだけど

今はもうリラックスタイムというか

皆それぞれ席を離れて好きなことやってるみたい。

ソファで寛ぐ男性がテーブル上の酒瓶を見ている。

「これ2リットルだよね。レシートは3リットルだ…。」

3リットル分の金とって2リットルを出す。ぼったくり。

「私、今から電話かける!」

一人の女性が立ち上がった。抗議の電話をするようだ。

強い。偉い。凄い。格好良い。

自分にはできない。勇気がない。

泣き寝入りして文句たらたら。格好悪い。

 

外の様子がおかしい。

遠くでサイレンが鳴っている。

米軍がここ日本で兵器の実験を行ったのだ。

予告なしに。予告してはならなかった。

日本は彼らの実験場。日本人は実験動物。

ある港で行われた実験。

米国がつけた記号的な名で呼ばれる港。

日本語らしくない名前で覚えにくい。

聞いてすぐに忘れてしまった。

 

窓の外を見ると空全体が黒い煙で覆われている。

すぐ近くに見える車は丸焦げ。大火事の後みたい。

"b計画"が実行されたとの情報が流れる。

嘘でしょ?本当にそんなことが?

ここと港との距離は…考えても全然分からない。

方向感覚、距離感覚、どちらも持たずに生まれて来た。

近い?被曝してしまう?外に出たら危ない?

せっかく出て来たから映画見て帰りたいんだけど?