母「入っていい?」
娘「言いながら開けるのやめてくれん?」
母「アンタおらん間、時々入っちょーに。」
娘「…。」
母は娘に思い出の一曲を聴かせる。
娘との思い出ではない。母の青春時代の思い出。
まあまあ有名なバンドのアルバムに収録されてる曲。
母とそのバンドマンとは個人的に親しかったらしい。
付き合ってた?のかどうかは分からない。
母が娘に聴かせたのはアルバムの最後の一曲だった。
「私のイヤリングの音だに。」
曲と言っていいのか。風鈴みたいな音。
それに少しずつアンビエントミュージックが重なっていく。
イヤリングの音は生音を録ったもの。
重なる音の方は電子音でトランス系のうねりを持つ。
メロディはない。うねる時の音量がどんどん大きくなる。
イヤリングの音がかき消されていく。
この曲というかトラックは幻の作品。
特殊な音であるため一枚のファイルに纏められず
正しい形でアルバムに入れることが出来なかったそうだ。