新曲 | 931

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第六天が雨yayoiが晴れとせん

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今日は久し振りの彼女とのデートだ

最近はライヴにレコーディングとスケジュールが詰まっていて
彼女と顔を会わせるのは一ヶ月ぶりだ

俺のデートは基本的に男女数名の集団で行う

遊園地などを二人きりで行って
デートだ何だと噂話のネタにされて嫌な思いをする事も無いし
昔から先輩のデートに付き合って
何人かで遊園地に行くことが有ったので此れが俺にとっては自然な行動だ

勿論、グループの誰と誰が出来ているとか
事細かに把握してる訳じゃないが、まじかで見ていれば何となく判る

俺達は俺達でフリーの付き人同士で宜しくやるし
先輩の立ち振舞いや女の扱い方を間近で観察出来るのも貴重な体験だからだ


スタジオで練習してる時から夜のデートにワクワクして
スタジオでの声が少し優しい気がした

メンバー皆でスタジオに入る機会は
一人でスタジオに入る日数に比べれば遥かに少ないが
それぞれが個人練習して、このスタジオ練習に望んでいる事は音を聞けば直ぐに判る

前回入った時に下ろしたばかりの新品だったpickがボロボロに為ってるのを見ると
昨日の個人練習を、もっとしとくべきだったんじゃないかと不安に感じる

7時までの予定だったスタジオ練習は伸びて
ミーティングが終わった頃には
夜の11時を回っていた

途中でデートに遅れるという断りのメールは入れたが
それ以上の事はしていない

行けなくなっただなんて無粋なメールを入れて
楽しい遊園地を台無しにしたくないし
俺達みたいな人生の価値観の大部分が音楽で出来てる連中には良く有ることだからだ

それに練習中は音楽の事以外は考えられない

ただ必死こいて歌うのがメンバーに対する礼儀てもんだからだ


日付が変わる頃に彼女に電話すると
随分と怒られ泣かれた

あまりに文句ばかり言うので
「そんなに俺の事が嫌ならもう連絡しないよ」と言うと
電話を切る間際に「お願いだから死んでほしい」と言われた


楽器を担いで一人で家まで歩く帰り道
横を通る道路から車のエンジン音が鳴り響き
真っ暗な歩道を歩く俺の横顔をテールランプが
時おり赤く浮き上がらせる

こういう時ほど俺は詩が浮かぶ

まるで作品を造る為に誰かを好きになり恋を終わらせてるんじゃないかと思うほどだ

悲しさも思いでも喜びも愛も全ては作品の中で輝き続ければいい



seが流れステージに飛び出した俺をスポットライトが照らす

腹に響くベース音が俺を駆り立てる

脳を抉るギター音が理性を吹っ飛ばす

軽快に鳴り響くドラムは戦いの行進曲を刻む

今の俺はナポレオンの軍隊みたいに
銃弾が飛び交い大砲が降ろうとも行進を続ける事が出来そうだ

俺のハートはこれ以上無いってほど震え
ビートはヤバイほど燃え上がり沸騰してる

ここに居る全ての人が色んな思いを抱き

多くの事を経験してコノ場に集ってる

俺は眼を閉じて、この場に居る全ての人に言った


「新曲です 聴いてください」